絶対にザックリしないアプローチは存在するのか
ーーザックリというのは「生活習慣病」みたいなもので、ビギナーよりもゴルフ歴の長いアベレージゴルファーに多いような気がします。しかもザックリが起きるのは、ラフよりライのいい花道。ショートゲームだけに、心理的な要素が大きいんでしょうか。
ザックリは、ある程度経験を積んだゴルファーが乗り越えなければいけない壁です。 100を切るぐらいのレベルになると、スコアに対する欲が出てきますよね。たとえばピンまで30ヤードなら、ワンピンに寄せてパーで上がりたいといったように。技術と欲求がアンバランスなんです。そうやって高望みをするために、「上手くやりたい」と気持ちが焦り、体がスムーズに動かなくなって出るのがザックリです。
それとグリーン手前の花道は、絶好のライではありません。むしろコースのなかでも難しいライといってもいいくらいです。芝がきれいに刈り込んであるライというのは、ボールの周りに不安な要素や邪魔なものがまったくないので、ボールをクリーンにとらえないとナイスショットじゃないという意識が出てきてしまうんです。特に、少し長めのふかふかしたボールが浮くような芝の花道は要注意。絶対にミスをしないようにしよう、クリーンに打とうと過剰な意識が働いてしまいます。
ーー自分で自分にプレッシャーをかけて、自滅してしまうんですね。
これは心理面だけが原因ではありません。たとえば、ラフにあるボールが多少浮いているのに対して、花道にあるボールはほぼ地面に接しています。それだけでも物理的にザックリしやすい状況なのに、多くの人はヘッドの芯でボールをとらえようとしている。「芯で打つ」意識そのものが、ザックリの原因だということも知ってもらいたいですね。
ーー芯で打つ意識を持つとは、きれいに打とう、きちんとボールにヘッドを入れようという意味でしょうか。
そうです。たとえば、花道のように芝を短く刈り込んだところからのアプローチでは、 スコアラインの下1〜2本目あたりで打つ意識が必要なんです。トップ気味ですね。それなのに、多くの人はスコアラインの下から4〜5本目ぐらいのところにある芯で打とうとしてしまう。だから、芝が短いとザックリになるんです。
ーーザックリを防ぐためには、フェースの芯を外して打てということですか。
芯を外すというよりも、フェースの芯はボールの置かれた状況によって変化すると考えて欲しいんです。たとえば、野球で送りバントをするときに、バットの芯では打ちません。送りバントを成功させるにはボールがいちばん飛ぶ場所ではなく、むしろ飛ばずに確実にゴロになってくれる場所で打つ。そこがバントのときのバットの芯なんです。
反対にホームランを打ちたいときはどうですか。スポットがバットの芯になります。これはゴルフでも同じです。花道からのアプローチでは、スコアラインの下から1〜2本目ぐらいが芯になる。もちろんドライバーの芯は、スウィートスポットです。
ーーザックリは防げても、今度はトップしてしまいそうな気がするのですが.........。
イメージとしてはトップさせるつもりでいいんです。花道なんだからゴロで問題ないでしょ。そのぐらいの意識ではじめて、スコアラインの下から1〜2本目の「芯」でとらえることができるんです。打ったときにカツンと音がしていいんです。パッティングのように、横からボールだけをさらっていったほうが、芝の短さに影響されず、スピンも安定して距離も合います。
ーーよくいわれる「パッティングのように」とは、トップ気味のアプローチのことだったんですね。ということは、ボール位置もパッティングと同じ、スウィングも同じでいいのでしょうか。
クリーンにとらえるためにはボールを右に置け、という人がいます。上からボールをつぶすように、鋭角にクラブを入れたほうがクリーンに打ちやすいと思うかもしれませんが、鋭角に下ろせば、少しでもボールの手前にヘッドが入ったときに、フェースの刃(リーディングエッジ)が地面に刺さってザックリしやすくなります。パッティングのようにヘッドを動かして、フェースの下側で打てば、刃の部分が地面に当たることはないでしょう。だから絶対、ザックリしないんです。
ーーパッティングのようにアプローチする際、他に気をつけることがありますか。
ボールと自分との距離も重要です。アプローチの苦手なゴルファーの多くは、目標の後方線上から見たとき、目の真下より外にボールを置いてしまっています。そうやって ボールを体から遠ざけると、どうしても手と体が離れてしまいます。これもザックリを起こす要因のひとつです。
パッティング同様、ボールを真上から見るようにして、グリップやボールは目線の内側にセットする。そのほうが体の一体感を出しやすいので、パッティングのようにスウィングしやすくなります。
「ネジらない!から遠くへ飛ぶ、ピンに寄る。」(ゴルフダイジェスト新書)より