練習場より本番で力を発揮するプレーヤーだからこその悩み
最終日、松山選手の発するファーの声を何度も聞いたでしょうか。9番、12番、13番、14番と、ドライバーでも、アイアンを手にしても、ティショットで左に飛ぶ球に終始苦労していました。曲げた場所から奇跡的なリカバリーでパーを獲ることくらいしか、この日の松山選手にはやれることがなかったという印象です。
自らがコース改修に関わった太平洋クラブ御殿場コースを舞台にしたトーナメントであることもあり、より結果を求めて臨んだ試合だったと思いますが、まだ復調の兆しは見えていないようです。コメントでは「練習場ではすごくいいと思うが、それがコースで違うとなると、やってることが間違っているということ」と言う通り、練習場との違いを探りながら、毎ショット感覚を研ぎ澄まし、きっかけを得ようとしている様子でした。
練習日の練習風景もウォッチしましたが、松山選手の場合、練習場よりも試合のほうが体のキレがあって、スウィングスピードも速いように感じますし、恐らく飛距離も練習のときより出ているはずです。そのことで体と腕、クラブの動くタイミングにほんのわずかなズレが生じ、それがインパクトでのフェース向きに影響していているように思えます。本番で練習以上の力を発揮するタイプであるが故の悩みなのかもしれません。
松山英樹選手の“現在地点”は、世界のトップ中のトップたちがしのぎを削る、極限のプレッシャーの中でのボールコントロールを求められる世界。昨年の2位で終えた全米オープンや、優勝したBS招待、優勝争いをした全米プロでは、テンションが上がりアドレナリンが出た状態でもタイミングにズレがなく、ボールコントロールできていたように思えます。
今回の“VISA太平洋”で優勝した額賀辰徳選手も火曜日に松山選手と一緒に回っていたときは、球が散らばってとても優勝争いをするようには見えませんでした。それが、1週前の沖縄の試合でやっていたことを思い出し、立て直したことで優勝をつかみました。プロゴルファーは、小さなきっかけで一気によくなるということがままあります。
松山選手にとって、練習場とコースでの違いは、体の動きなのか気持ちなのか分かりませんが、紙一重のズレをマッチさせるカギは実は本人の中にもうあって、些細なきっかけで抜け出せるように思います。そういう意味でも、今週開幕する「ダンロップフェニックス」は、きっかけをつかむ試合になるのではないでしょうか。苦しんだ最終日とは裏腹に、そんな予感がします。