先週に引き続き、今週開催の男子ツアーダンロップフェニックスにも出場する松山英樹。世界トップレベルの技でギャラリーの目線を釘付けにしているが、実は彼のプレーに熱視線を送っているのは同業のプロたちも一緒。現地で取材するプロゴルファー・中村修が、若手プロたちに松山とプレーする意義を聞いた。

松山のプレーを見ることで、自分と世界との距離を知る

「狙ってました!」

練習日の今日、松山英樹と練習ラウンドをともにした嘉数光倫プロが開口一番そう言いました。トーナメントの練習日、キャディマスター室前に練習ラウンドのスタート表が置いてあるのが通例なのですが、松山選手の組に空きがあることを目ざとく見つけた嘉数選手はすかさず自分の名前を記入。晴れて、松山選手とのラウンドが実現したというのです。

現在28歳の嘉数選手と26歳の松山選手は、学生時代に2度同組でプレーしたことがあったそうで、嘉数選手曰く「お友達って感じではないスけど、面識はあるってレベル」だそう。“知らない仲ではない”ことを生かし、積極的に世界の技を盗みに行ったようです。

松山選手との降ってわいた練習ラウンドを「いやー今日はラッキーでした!」と振り返る嘉数選手に、間近で見た松山選手の印象を聞きました。

画像: 松山との練習ラウンドを狙っていたという嘉数。年上ながら、そのプレーを吸収した

松山との練習ラウンドを狙っていたという嘉数。年上ながら、そのプレーを吸収した

「やっぱりすごいなっていう印象ですよね。体もでかいし、トレーニングもしているんだろうからまずはパワーがすごい。次に、みんなが注目しているアイアンは、本人調子悪いんでしょうけど、実際『あ〜』って言ってましたけど、グリーンに乗っている。『そんなに悪いのか?』っていう感じです。パワーもあるし、感覚も鋭いなって思いました」(嘉数)

松山選手といえば世界レベルのアイアンの切れ味。しかし、嘉数選手は「キレというより、高さがすごい」と言います。

「球が高いので、日本でいうショットのキレっていう感じじゃなくて、アプローチみたいにボールが落ちくるんすよ。彼の球だけ簡単そうに見えました。200オーバーのパー3の難しいアイアンショットでも簡単にポーンと落ちてくるんです。アプローチは60度を使っていると思うんですけど、やっぱり小手先で打ってないなと。体全体でクラブを操ってるなって感じました。上手すぎてわけわかんないけど、すごい食いついてボールが後から出てくるスピンボールとか、まだまだ真似できない部分だなと感じました」(嘉数)

さて、今週松山選手と予選ラウンドを共にするのが、星野陸也選手。石川遼、松山英樹というビッグネームとのペアリングは、大きな注目を集めること必至ですが、星野選手にも松山選手とのラウンドで楽しみなことを聞きました。

「めちゃ楽しみですよね! 松山さんとは練習ラウンドで1回しか(回ったことが)ないんで、世界(レベルの選手)の試合の作り方を見てみたい。勉強しながら、自分も負けないようにと思います。自分と(世界の)トップクラスとの差がどれだけあるかわかると思いますし、自分の経験にしたいです。コース的にも面白いですし、特有の芝でフェアウェイにあるボールがちょっと沈むのが難しくて、そこを上手くクリアしていかなくちゃいけない。(そういうライからの松山の打ち方を見るのも)楽しみっすね」(星野)

画像: 勉強しながら、自分も負けないようにと話すのは星野陸也。伸び盛りのプレーを見せたい

勉強しながら、自分も負けないようにと話すのは星野陸也。伸び盛りのプレーを見せたい

先週の三井住友VISA太平洋マスターズでは、松山選手の東北福祉大の後輩にあたるAbemaTVツアー賞金王、佐藤太平選手が、グリーン奥からの逆目のアプローチを教わる姿が見られました。佐藤選手は「聞ける機会もなかなかないので、聞ける時に聞いておかないと」と、貪欲に技術を吸収していましたが、その姿勢は今日話を聞いた嘉数、星野の両選手にも共通するところのようです。

たとえるならば、若手プロたちにとって松山選手は自分自身と世界との距離感を図るための「物差し」であるようです。自分のショット力、飛距離、小技は世界で通用するのか、しないのか、松山選手を見ながら測ると同時に、世界の技を吸収する。

わずか2試合ではありますが、松山選手が日本ツアーにいる。その影響は非常に大きいものがあると感じました。

※2018年11月13日22時21分、内容を修正しました

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