残り30ヤードからピンにぴったり寄せたいと思わないゴルファーは、おそらく古今東西いないのではないでしょうか。ゴルフは1打でも少なくカップにボールを入れることを競うゲームなのだから、
少しでもカップに近づけたいと思うのはゴルファーの本能です。
しかし、たとえば砲台グリーンで手前ピンの場合はどうでしょうか。プロならばサンドウェッジで高い球を打つか、スピンをかけてキュキュッと止めるか……そういった戦略で攻めてくるはず。プロならずとも、このような状況では高い球で寄せたいという誘惑にかられます。まさに、ここに罠が仕掛けられています。
サンドウェッジで高い球を打つのは、たとえばアプローチウェッジやピッチングウェッジでピッチ&
ランをしたり、9番アイアンで転がすのに比べ、いうまでもなく難しい選択です。ダフリ・トップの危険性も多くありますし、上手く打てたはいいけれど距離感が合わずに大オーバー、あるいはショートということも考えられます。
ピタリと寄せられる確率がもっとも高いのは「サンドで高い球」という選択肢かもしれませんが、それは同時にもっともスコアを崩しやすい選択肢でもあるんです。そして、往々にしてそのような選択はリスクに対するリターンが少ない場合が多い。つまり、平均スコアを悪くする選択であると言えます。
たとえ砲台などの難易度の高い状況でないとしても、30ヤードから考えるべきは、「寄せる」ではなく「乗せる」ことです。極端なことをいえば乗せるのはグリーン面のどこだって構いません。そうすれば、ひとまず2パット、悪くても3パットの計算が立ちます。それが3打目ならば、ボギーかダボがほぼ確定するからです。
サンドでフワリと浮かそうとしてダフったり、トップしてグリーン奥まで転がり落ちたり、グリーン手前にショートしたら? 100切りの大敵であるトリプルボギー以上のスコアが簡単に出てしまう。
グリーンというのはゴルフコースの中でも非常に特殊な場所で、そこに「乗せる」ことはスコアに対して極めて有利に働きます。ほんの1ヤード。大きく踏み出した一歩の歩幅程度グリーンを外しただけでも、オンした状況とは大違いになることは、ゴルファーなら誰でもわかることでしょう。
そして、「寄せよう」と考えるか、「乗せよう」と考えるかは、ただの気持ちの問題ではなく、クラブ選択やショットマネジメントに大きく影響します。先ほどの30ヤードの砲台グリーンで手前ピンの状況、「乗せよう」が前提にあれば、アプローチウェッジなりピッチングウェッジなり、打ちやすい慣れた番手で適当に打つくらいの選択になるでしょう。
9番や8番アイアンなどで手前から転がし上げるのもいいでしょう。どちらもピンにピタリと寄るイメージは湧きにくいかもしれないけれど、ピンから10歩くらい圏内には止まるのではないでしょうか。
「乗せて2パット」を狙っていれば、たまにはワンパットで入ることもあります。打ったボールがピンに当たってチップインバーディ! なんてこともあるでしょう。安全で、確実な選択肢を選ぶことは、決してつまらないゴルフを選択することではありません。最後までチャンスを残すゴルフを楽しめるようになれば、100切りは必ず見えてきます。
(『100切りマネジメント研究所』より)