どれだけ飛ばすかより、どこに飛ばすかが大切。
パー3を除くティーショットでのフェアウェイキープが、14ショット/14ショット(100%)、そしてグリーン・イン・レギュレーション(パーオン率)が18ホール/18ホール(100%)。これはチャールズ・ハウエル3世(米国)が、今週開催されているPGAツアー「RSMクラシック」の第1ラウンドで記録したラウンドサマリーである。
ティショットが完全にフェアウェイを捉えれば、第2打以降できっちりとグリーンに乗せられる。そうなれば8バーディ・ノーボギーの「64」というベストゲームもついてくる。まさに絵に描いたようなゲームプランである。
大会初日は気温が低く、各選手我慢比べの様相を呈していたが、チャールズ・ハウエル3世はとくにドライバーショット(タイトリスト/TS3/10.5度使用)に冴えをみせ、巧みなボールコントロールでことごとくグリーンを捉えた。400ヤードに迫るロングディスタンスで、難コースをねじ伏せていくような最近のPGAツアーには珍しい、正確無比なショットで積み上げた8バーディであり、首位スタートだったように思う。
その好プレーを見ながら思ったことは、飛距離には縦ばかりでなく、横があるということだ。前者はどれだけ飛ばすか、後者はどこに飛ばすかという表現になるだろうか。何のための飛距離か、という問いかけにもなるだろう。
当然のことながらゴルフは自分のホールで行うべきものだ。今いるホールを効率よく、安全に進むには各ショットをどこに運べばいいのか。それを考えながらクラブ(距離)を選び、ボールを打っていくのがゴルフである。ドラコン競技ではないから、どれだけ飛ばすかは本来不要。どこに飛ばすか(運ぶか・置くか)が、ドライバーショットにおいてもウェッジショットと同じように重要になってくるわけだ。
狙った方向に飛ばなければ、いくら飛んでも意味がない。
正確無比なチャールズ・ハウエル3世のプレーを見つつ、そんなことを考えていると、ふと以前取材したキャロウェイゴルフの元開発総責任者、リチャード C.ヘルムステッター氏の言葉が思い出された。
「ドライバーヘッドをカーボンボディにして、フリーウェートをたくさんもって我々が何をしたいのか。それはスクェア・インパクトを提供したいのです。狙ったところにきちんと打ち出す、それができなければ縦の飛距離が伸びても意味がないでしょ?」
その当時、キャロウェイは「フュージョン(FT)」というカーボンボディドライバーを開発中で、カーボン積層の間に大きなウェートを配置する実験を繰り返していた。複数のウェートの組み合わせや配置を変え、ゴルファーごとのスクェア・インパクトを提供する“カスタマイズ・フュージョン”というモデルを展開しようとしていたのだ。チャールズ・ハウエル3世が、当時のキャロウェイを背負う看板プレーヤーだったのもあり、こんな懐かしいことを思い出したのかもしれない。
今、ドライバーの多くにはロフトや弾道を変える目的で可変シャフトスリーブや動かせるウェートが付いている。いわゆるカチャカチャ機能だ。ゴルファーの中には、こんなの付いていたって難しくてわからん! 使ったことがない! という人も多いと聞くが、こうした機能が生まれた背景、源流には、間違いなくスクェア・インパクトがあったこと。遠くに飛ばす! ではなく、狙った方向に打ち出す! そのことが何より大事だとキチンと説明された時代があったのだ。
久しぶりにチャールズ・ハウエル3世の好調なプレーをみて、大切なことを思い出した気がした。