「ジュニアの頃から自分が築き上げてきた記録をすべて塗り替えられてきた」
記者会見は和気あいあいとしたムードに包まれた。口火を切るのは常にミケルソン。その隣でタイガーはにこやかな笑顔を浮かべている。
「ずっと考えてきたんだがシャドークリークの1番で自分は絶対にバーディを獲る自信がある。スタートホールでバーディを獲るに10万ドル(約1120万円)賭ける」とミケルソンが宣言するとタイガーは「よし、じゃあダブルで」と20万ドルの賭けに乗ると応じた。
「2番アイアンでフェアウェイをとらえて、そこから世界一といわれるショートゲームの名手である自分が寄せてバーディ」と青写真を描くミケルソンに「多分ティショットを左に曲げるから、そこからのアプローチはどうかな? 思い通りにいくかな」と茶々を入れるタイガー。2人のやり取りが記者たちの笑いを誘う。
対決ムードは内に秘めリップサービスに務めたミケルソンだがこのマッチに賭ける思いは我々が想像する以上に熱いようだ。
そもそも「ザ・マッチ」を企画し実現させたのはミケルソンなのだ。それは5月のザ・プレーヤーズ選手権でのこと。予選ラウンドでタイガーとミケルソンが同組で回ったことが大きな話題になったがあいにくミケルソンは予選落ち。「次は決勝ラウンドで対決したい」と語ったがこのとき彼のなかでは「トーナメントの枠を取っ払ってタイガーと1対1で戦いたい」という思いが湧き上がっていた。
そしてタイガーの賛同を得て各方面に働きかけた結果「ザ・マッチ」の実現にこぎ着けた。
「彼にはジュニアの頃から自分が築き上げてきた記録をすべて塗り替えられてきた。全米アマに勝ったと思ったら向こうは3連覇。メジャーでもなんでもあとからきてすべてをさらっていった。シャドークリークでもこっちが61のコースレコードをマークしたらすぐあとに60。勝てなかった積年の思いを今度こそ晴らすんだ」と並々ならぬ思いを打ち明けた。
ミケルソンの思いとは裏腹に下馬評ではタイガー有利は揺るがない。そのタイガーが唯一「勝っても絶対にやらない」と断言していることがある。
ミケルソンは今年Mizzen+MainというYシャツメーカーのCMで華麗(?)なダンスを披露して話題になったが、タイガーは「(勝っても)絶対に踊らない」と宣言。すると「そんなこといったって僕がやらせてみせるさ」とミケルソンが挑発。この会話には本人たちも破顔一笑。会場から爆笑が巻き起こった。
世紀の対決は果たしてどんな結末を迎えるのか? ショータイムのはじまりだ。