小さな金属塊を大きく膨らましてきたのが平成の30年間
平成元年(1989年)のドライバーはどんなモデルだったかと、改めて振り返ってみると、それは現在のドライバーの半分の大きさにも満たない、石ころのようなメタルヘッドだった。
ご存知のとおり、当時はまだパーシモン(柿の木)ヘッドが隆盛で、ようやくステンレスメタルが米ツアーでブレイクし始めた頃だ。160ccくらいの小さい金属ヘッド。そこからヘッド素材がチタンとなり、カーボン複合になり、途中ルール上で体積の上限が定められたことによって、現在は460ccがマキシマムサイズとなっている。
写真1を見て欲しい。指先でつまんだ小さな金属キューブだが、これが200gのステンレスだ。ドライバーヘッドは、今も昔もだいたい200gを目指して開発されるから、平成元年のメタルヘッド草創期というのは、このステンレスキューブを空洞化し、薄肉化し、風船のように165cc程度まで膨らませたものだといえる。小さなキューブを手にすると、その技術の凄さを改めて感じることができる。素材がチタンとなり、さらに薄く大きくドライバーは進化していくが、驚くのはその重量である。秤の皿からはみ出そうなほど大きいのに、ステンレスキューブよりも軽く仕上がっているのだ。
大型化については、ルール上ですでにリミットを迎えているため平成後期の開発主眼は、さらに軽量化し自由に使える重さを生み出し、必要な箇所に重さを再配置していく「ポイント・ウェイティング」、つまり最適重心設計の追求。あるいは、重さを人に合わせるために使う「アジャスタビリティ機能」の付加という方向にシフトしている。
大きなヘッドは合わない!? 万能とはいえないやさしいモデル
ヘッドの慣性モーメントを大きくすれば、打点を外しても曲がりが抑えられ、飛距離が落ちない。“大きいことはいいことである”。そうやってヘッドを風船のように膨らませてきたのが平成の30年間だった。
そんなことを書きながら、ふと日本の男子ツアーに思いを馳せてしまう。宮里優作はテスト中の260ccヘッドドライバーを今週も使っているのだろうか。石川遼はドライバーショットに不安を抱えながらスタートしたのだろうか? などと。
ゴルファーにとって“やさしく”進化してきたはずのドライバーなのに、その最新モデルに不安や悩みを感じるプレーヤーがいるのはなぜなのだろう? と、考えてしまうのだ。アマチュアの中にも新しいモデルを買い続けているが、相変わらずドライバーが苦手だと感じている人はいるはずである。
平成は終わり、新時代がやってくる。求められるのは、選択肢である。大型ヘッドはいまいちうまく打てない、と思い始めているゴルファーに向け、どんな新しいティショットクラブを提案するのか? 今、主流のドライバー開発を肯定しつつ、別路線でのモデル拡充も期待せずにはいられない。