実はアマチュアの参考になる“虎さん”のスウィング
カシオワールドオープンで日本ツアー初優勝を果たし、賞金ランキングも10位と活躍したチェ・ホソン選手。とにかく、プレー中に見せる独特な動きで注目を集めているわけだが、もっとも注目を集めているのが、右脚をインパクト直後に地面から離し、左脚を軸に思いっきり回転し完全に体勢を崩して放たれる正確なショットだ。
そのスウィングの大きな動きにかかわらず、ショット精度は高い。そこで独特な彼のスウィングを分析してみた。
まずアドレスだが、もうすでに特徴的だ。上田桃子、川村昌弘、谷口徹選手など、ややクローズスタンスに構えるプレーヤーは日本ツアーにも多少いるが、ホソン選手のクローズド具合は群を抜いている。そのアドレスからバックスイングはかなりアウトサイドに引かれ、やや高めのトップからアウトサイド気味からクラブはインパクトへ向かう。
この過程で注目すべき点は彼の下半身の使い方だろう。他のプレーヤーに比べ下半身の始動が早く、下半身をうまく積極的につかえていると言える。
インパクトはセルヒオ・ガルシアぐらい手が低い位置まで降りてきており当然R160(※編注:インパクトで腕とシャフトの作る角度が160度以内であること。筆者が提唱する一流選手の条件で、インパクトで手元が浮くとこの基準が満たされない)も満たし理想的なシャフトの使い方だ。
他の選手と大きく違う所が右足の使い方で、インパクト瞬間に右足つま先がぎりぎり地面についているぐらいでベタ足の真逆だ。右足の蹴りがかなり強いプレーヤーにジャスティン・トーマスが挙げられるがホソン選手の蹴りはトーマスよりも強く使われていると言えるだろう。
ベタ足は安定感の象徴としてよく言われたりもするが、下半身の動きを弱くすることに直結し、いわゆる手打ちを誘発しやすい。ホソン選手はこれだけ積極的に右足、下半身を使っているのにもかかわらず精度の高いショットをはなっている。
そのポイントとして私が最も注目したのは、彼の頭がインパクトまでほぼぶれないということだ。統計的スイングデータ分析の結果、スイング中において軸は頭にあると考えて良いと私は考えているが、ホソン選手の軸、つまり頭はインパクト瞬間まであれだけ激しく動いている下半身にかかわらず、ぶれていない。インパクトまでしっかりと軸を維持し、その上でフォロースルーにかけて右半身の力を最大限に利用しているのがチェ・ホソン流だ。
では、これらの特徴の中でアマチュアが参考するべき点と、そうでない点をまとめてみる。
参考にできるのは、まず理にかなったアドレスのとり方だ。ほとんどのアマチュアはターゲットに対してホソン選手のように右を向いてしまう傾向が強い。スウィングプレーンがアウトサイドインのため球は左に飛びやすいので、気づかずうちにどんどん右を向いていってしまうのだ。
ホソン選手の場合もスウィングプレーンはアウトサイドインなのでターゲットに対して右を向くのは起こりがちなことだ。ただ、ホソン選手とアマチュアの大きな違いは球筋のイメージと自分のくせに対する理解だ。
ホソン選手は自分のスウィングプレーンを理解していて、自分のスウィングプレーンで飛距離を安定的に出すことに特化している。引っかけた球というのはつかまった球なので飛距離が出る。ホソン選手はそれをあえてやっていて自分のスタイルにしている。
アマチュアの場合、まっすぐ向いているつもりで実は右を向いているので、イメージに大きな差がでてしまう。多くのアマチュアはこの右向いて左につかまえていくというチェ・ホソンスタイルは参考にできるところはあるだろう。まず、自分が自然に構えてどこを向いているかの確認をすると良いだろう。おそらく右を向いている人がかなり多いはずだ。
もう1つ参考になるポイントは頭だ。とくに大事なのはトップポジションからインパクトにかけて頭を左右に動かさないということだ。これを意識するだけでミート率は格段にあがる。
では参考にすべきでない点は何だろう。それは、フィニッシュで片脚になるほど力強く大きく振ることだ。練習時間をプロのようにとれないアマチュアにとっては、とにかくミート率を上げることが平均飛距離をあげることにもっとも貢献する。むしろ、スイングを小さくしスピードも遅くするぐらいのほうがショットパフォーマンスはあがるだろう。