今季(2018年)の国内女子ツアー賞金ランキング32位で、昨季に続いてシード権を獲得した東浩子(加賀電子所属)の専属キャディを務めるプロキャディ・先崎洋之。キャリア18年の彼に「女子プロがゾーンに入る瞬間」について聞いてみた。

負けず嫌いが多い女子プロは男子プロよりゾーンに入りやすい

トーナメントでビッグスコアを叩き出した選手が、ラウンド後のインタビューでよく口にするのが、「今日はゾーンに入った」というコメント。

ショットの調子が良いときに、ゾーンに入りやすいのはもちろんだが、「ツアーで活躍するプロゴルファーは皆、“勝負師”なので、ひとたびスイッチが入ったときの集中力がスゴイんです。とくに、女子プロは男子プロよりも、勝負に対するこだわりが強くて負けず嫌いの選手が多いんですよ。だから、男子プロよりも女子プロのほうが、ゾーンに入りやすいといえるかもしれませんね」(先崎、以下同)。

画像: プロキャディとして東浩子(写真右)を支える先崎洋之(写真左)(写真は2018年のほけんの窓口レディース 撮影/岡沢裕行)

プロキャディとして東浩子(写真右)を支える先崎洋之(写真左)(写真は2018年のほけんの窓口レディース 撮影/岡沢裕行)

では、プロはいったいどんなときに、ゾーンに入りやすいのだろう。そのきっかけはプロによって様々だが、「ドライバーで会心の当たりが出たり、アイアンがベタピンについたとか、ショットでゾーンに入ることはあまりないんです」という。

「いちばん多いパターンはやっぱりグリーン上のパットですね。たとえば、以前にバッグを担いでいた金田久美子プロは、寄ればOKという長い距離のパットが、ポンと入ったりしたときにスイッチが入ることが多かったですね。長いのがひとつ入ると、そこから急にショットの調子まで良くなったり。毎週のように優勝争いや上位争いに入るぐらい調子の良いときは、そんなラウンドが毎試合のようにあります」

また、グリーンの外からのアプローチがチップインしたときなども、ゾーンに入るきっかけになりやすいそうだ。プロキャディ歴18年で1度の優勝経験も、プロがゾーンに入ったラウンドがもたらしたという。

「北田瑠衣プロのキャディをしていたときで、2007年の『伊藤園レディス』でした。2日目に5アンダーの好スコアが出たんですが、その日は完全にゾーンに入っていましたね。3日目の最終日は前日と雰囲気がガラリと変わって、終始淡々と落ち着いてプレーして優勝したのが印象的でした。ゾーンに入っているときは、プレーに対する迷いがないので、決断が早くなり、どんどん会話が少なくなってくるんです。ピンまでの距離と風の向き、強さだけを聞いて、スッとプレーに入っていきます」

そういうときは極力、余計な会話は控え、プロの良いリズムを崩さないように、細心の注意を払うという。

「ある意味、調子が悪いときや、手痛いミスが出たときよりも、ゾーンに入っているときのほうが、神経を使うかもしれませんね。良い流れを止めてはいけないと思う反面、ミスしたらパーをセーブするのが難しい位置にピンが切ってあっても、プロは気持ちが“イケイケ状態”になっていますからね。ラウンド前のチェックでここは守るところと決めていたホールに来たり、持ち球やそのときの調子を無視して、プロが無理な狙い方をしているときなどは、勇気を持って“手綱を引く”ことも、プロキャディの大事な役割ですから」

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