「かつてドライバーのメタルヘッドが登場したとき、パーシモンからスムーズに移行できた人と、
そうでない人がいました。それと同じように、新ルール適用後は“抜く人・抜かない人”が出てくるとは思いますが、データ的にはピンを差したままのほうがカップインの確率は高まるそうです。ですので、ラインの読み方からパター選びまで、非常に多くの影響が出ると思います。ゴルフが変わる、そんな印象すらあります」
そう語る永井。海の向こうではゴルフの科学者ことブライソン・デシャンボーが「ピンの材質次第で、抜く場合と差す場合があると思う」と発言したり、ルール適用前から大きな話題になっているピンを差したままでのパッティング。
パッティングを科学的に分析したことで知られる有名コーチ、デイブ・ペルツの研究では、状況にはよるものの、ピンは差した状態のほうがカップインの確率は高まるそうで、そうであれば“抜く理由がない”ということになる。
「問題は違和感。たとえば、シングルレベルのゴルファーなど、ゴルフに慣れている人ほど『イメージが湧かないから、抜いたほうがいい』という場合が多いようです。ただ、やってみると実感できますが、ショートパットをしっかり打つことができるようになるので、他はいいのにショートパットだけが苦手というプロが、新ルールでブレイクするようなことは起こると思います。そして、パター選びも変わってくると思いますね」(永井)
ピンが差したままであることで、ショートパットをカップの真ん中を狙って強めのタッチで打つこと
ができるようになる。そして、そのように打つためには「芯を外れてもブレが少ない」大型マレットよりも、「芯に当てやすい」キャッシュインタイプのようなシャープなモデルのほうがやりやす
い。「たとえばデシャンボーあたりがネオマレットとキャッシュインの“パター二刀流”を採用しても驚きませんし、大型マレットで機械的にストロークする片山晋呉プロが、ショートパット用にキャッシュインを採用する可能性だってあり得ると思います」と永井は分析する。
と、ここまではプロレベルの話だが、我々のラウンドレベルでも影響は大きそうだ。
「生徒さんからは、ピンを差したままだとボールを拾いにくいという意見も聞かれました。物理的に狭くなることでボールを拾うときに甲側でカップの縁を傷つける可能性もあり、ゴルフの基本中の基本であるコース保護、カップ保護ということは再度啓蒙する必要が出てくるかもしれません」(永井)
また、肝心のプレーの時間の短縮効果はどうかといえば、これは間違いなくありそう。仮にセルフでプレーする4人一組全員がピンを差したままパットをするとすれば、他のプレーヤーがピンを持って最後のパットが終わるまで見守る必要がなくなる。パットを終えた人からクラブを拾ったり、次のホールへ向かう準備をすることができるため、18ホール積み重なればそれなりの時短効果があるだろうと永井は指摘する。
「実際に施行され、明らかにストロークが良くなるとなれば、もしかしたらプロのトーナメントではピンを従来通り抜くように、といったルールの訂正もあるかもしれませんが、基本的にはアマチュアゴルファーもピンを差したままの状態に慣れておいて損はありません」(永井)
ピンを差したり抜いたりはそれなりに時間がかかるもの。まして、差したままのほうがスコアも良くなるのなら、やらない理由がないようにも思えるが、カップの保護などマナー面での課題もある。そして、それ以上に最初は違和感もあるはずだ。来年の今ごろ、「ピンを差したまま」は常識として浸透しているのか、否か……!?