PGAツアー2017-18年シーズンの最終戦を優勝で終えたタイガー・ウッズ。絵にかいたような復活劇を飾り、いよいよ来年のメジャー優勝に期待がかかる。そんなタイガーの最新スウィングをゴルフスウィングコンサルタントの吉田洋一郎が解説する。

鋭さを増した右サイドの動き

9月のツアー選手権で初日から首位を譲らず完全優勝を果たしたタイガー・ウッズ。世界ランクも14位まで上がり、いよいよ来年は15回目のメジャー優勝に期待がかかります。自身にとって2018年の最終戦、ヒーローワールドチャレンジでは出場18選手中17位でのフィニッシュとなりましたが、復活を期したシーズンとしては満足度の高い結果だったのではないでしょうか。

ウッズ自身、大会終了後に「本当に素晴らしい1年だった」と語っているように、来期以降のキャリアにとっても大きな転換点になった1年だったと思います。そんな1年の中でタイガーのスウィングを見てみると、試行錯誤を繰り返しながらも、その時にフィットしたものを選んでアップデートしているように見えます。

1月のPGAツアー復帰戦ファーマーズインシュランスオープンでは、現地でスウィングを観る機会がありました。そこではクラブの動きを最大限に生かし、体に負担のない動きを取り入れていました。ダウンスウィングでクラブを抑え込むように身体と手首を使ってフェース面をコントロールするのではなく、手首のリリースを早めてインパクトゾーンでヘッドが走らせるような動かし方です。

実戦を戦える身体になるにつれ、自身でクラブをコントロールする動きを入れるようになりましたが、それでも以前と比べるとクラブの運動量は格段に多くなっています。

昨年のタイガーのスウィングについて、キーガン・ブラッドリーやレクシー・トンプソンらを指導した経歴を持つベテランコーチのジム・マクリーンに話を聞きました。

画像: 2018年の全米プロゴルフ選手権(右)と2013年のアーノルド・パーマーインビテーショナル(左)のアドレスを比べるとワイドスタンスになっているのがよくわかる

2018年の全米プロゴルフ選手権(右)と2013年のアーノルド・パーマーインビテーショナル(左)のアドレスを比べるとワイドスタンスになっているのがよくわかる

「下半身の使い方に大きな変化が見られます。これまでよりワイドスタンスにして地面を使える(踏み込めるよう)になったことが大きいのではないでしょうか」

故障前の2012年頃のタイガーはスタンスが狭く、左軸でハンドファーストのインパクトを作っていました。クラブをコントロールするのに力のいるドライバーでもこの動きが見られ、背中や腰に大きな負担がかかっていたと考えられます。この時は左軸で右への体重移動を行なっていませんでした。テンポが速く、力感はあるものの身体や腕でクラブを操る動きが見られました。

現在はバックスウィングの際に右足で地面を踏み込み、その反動を使ってトップを作っています。切り返し以降でも右サイドで地面を踏む動きが強くなっており、右サイドを積極的に使って地面からの反力(地面反力)を生み出して上半身の回転を速くしているのです。

「外力」を使うことで、ヘッドスピードをアップさせた

インパクトでの右足の浮き具合を見ると、以前はベタ足のようにかかとがゆっくり上がっていました。現在は右足で蹴るような動きが入った後に右かかとが早い段階で上がり、地面を押していることが分かります。この右サイドの動きによって竹とんぼのような垂直軸に対するトルクが発生します。

以前よりワイドスタンスにして右サイドを使えるようになったタイガーはバックスウィングで右かかとと左のつま先に体重がかかります。これが切り返しをきっかけに右つま先と左かかとに向かって体重が移動します。この動きを行う事で前後軸の縦の地面反力だけではなく、垂直軸に対するトルクによって回転を速めることができます。

タイガーは優勝したツアー選手権直後に行われたライダーカップの際、練習で右足を左足に寄せるように地面を押す動きを素振りなどで強調して行っていました。

画像: 2013年のアーノルド・パーマーインビテーショナル(左)に比べて2018年の全米プロゴルフ選手権(右)は右足を蹴るような動きがみえる

2013年のアーノルド・パーマーインビテーショナル(左)に比べて2018年の全米プロゴルフ選手権(右)は右足を蹴るような動きがみえる

加齢や故障があったにも関わらずタイガーが以前より速いヘッドスピード(57.75m/s)を出せたのは、筋力や柔軟性といった「内力」に頼るのではなく、地面反力やトルク、遠心力といった「外力」を用いたからです。

前コーチのクリス・コモによってもたらされたバイオメカニクスの知識によって、来年は更に進化したスウィングを作りこんでくるでしょう。

そのクリス・コモがティーチングに取り入れているバイオメカニクスについて知りたい方は拙著「飛ばしたいならバイオメカ。驚異の反力打法」をぜひご覧ください。

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