2シーズン続けて、シード権を獲得した東浩子プロ。彼女のプロ入り時からずっとバッグを担ぎ、6年間の成長を見てきたプロキャディの先崎は、「最初に彼女のスウィングを見たときから、ショットはシード選手クラスの実力を持っているのが分かりました。ドライバーもほとんど曲がらないし、何よりもアイアンのインパクト音がよかった。でも、シード選手になるのに、ちょっと時間がかってしまったのは、メンタル的に少し弱い部分があったのが原因なんです」(先崎、以下同)。
いい調子でプレーできていても、ミスショットが出た後に気持ちの切り替えが上手くできず、ミスをズルズルと引きずったまま、スコアを崩してしまうことも多かったという。「ツアーで何勝もしたり、毎年安定した成績を残している選手と同組になったときに、そのプレーぶりを見ていて共通しているなと感じる部分は、気持ちの切り替えの早さ、上手さなんですよ」。
女子ツアーのなかでも、特に気持ちの切り替えが上手だと感じるのは、賞金女王に3度(2010、2011、2014年)輝き、日本ツアー通算22勝を挙げているアン・ソンジュ選手だという。「彼女はミスショットを打っても、その瞬間は厳しい表情をしますが、次のショットに入る前には笑顔に戻っている。前のショットのことは忘れて、この一打をどう打つかを楽しむぐらいの、心の余裕があるんですよ。いかに目の前に一打に集中することが大事か。彼女のプレーからはメンタルの重要性を教えられましたね」
東プロが2年連続でシードを獲得できたのも、ここ数年でのメンタルの成長が大きいと先崎はいう。「ボクの知り合いにメンタルトレーナーがいて、昨年からその方のアドバイスを受けるようになったのも、メンタルが成長した理由のひとつだと思います。以前のように、ミスを引きずることが減ってきて、次のショットまでにしっかり気持ちを切り替えられるようになりましたね。ミスしてボギーを打っても、その先のどこかで取り返せばいいと考えられるようになった。それで安定した成績を残せるようになったんです」
選手のなかには、自分のミスショットをキャディのせいにして、当たり散らす人もいるが、
「それでスッとして、気持ちが切り替えられるなら、全然オッケーなんですよ。グッと我慢して、心のなかにため込まれるほうがよっぽど悪い。ごく稀ですが、東プロも最近はそういうときがあります。自分に対する怒りをボクにぶつけることで気持ちが楽になるんだと思います。選手に、いかに気持ちよくプレーしてもらうかが、ボクたちプロキャディにとっては、もっとも重要な仕事であり、腕の見せどころでもあるんですよ」