ゴルフのスウィングはとても勘違いをしやすい上に、一度覚えてしまった癖は直りづらい。ベテランゴルフライター塩田正が、故・中村寅吉への取材を通して教わった正しいスウィングの作り方を、著書「ゴルフ、“死ぬまで”上達するヒント」よりご紹介。

肩は回そうと思うから回らない。バックスウィングは腹を右に向けるだけ

ゴルフのスウィングは、どの部分をとっても勘違いを起こしやすい。自分では真っすぐ目標方向にスタンスをとったつもりでも、見る人が見ると右に向いていたり、左に向いたりしているのだ。そのほかにもインパクトで体重が左へ移っていると思っていても、写真で見ると右かかとがべったり地面についていて、左かかとが浮いた格好になっていることがよくある。

私の最初の勘違いは、バックスウィングのときの左ひざだった。取材でプロやアマの競技を見て気がついたのだが、テークバックのときに、どの選手も左かかとが上がり、左ひざが曲がって、きれいに内側に収まるのである。

大学の部活のとき、原田盛治先生から「フットワークの重要性」も聞いていたので、よいものを発見したとばかり、素振りを含めて、スウィング中はこの左ひざの動き一点に絞って猛練習をした。

さて、その左ひざの練習の結果はどうなったのか。実はそれがひどい結果に終わったのである。練習を積んで3カ月くらい経ったある日、知人に連れられて行った練習場のアシスタントプロから「左足にすごく体重がかかっていますね」と、バックスウィングを注意された。

自分ではまったく気づかず、むしろほめ言葉を期待していたのだが、彼が真似してみせた私のフォームは、左ひざが前に突き出て、左肩ががくんと下がった格好で、想像していたバックスウィングのトップとは、まったく違うものだった。今でいう「逆体重のトップ」だったのである。なんということはない。3カ月間、わざとフォームを崩す練習をしていたわけである。

かのアシスタントプロ氏は、別れ際に「右足体重で左肩をボールより後ろまで回してくるんです」と教えてくれた。

私は、それからは彼のいうように右足荷重で、左肩をボールの後方まで回す練習をしたが、なぜか左肩をボールの後ろまで回すことに不安感があって、なかなか彼のいうようなトップをつくれなかった。

そんなとき救ってくれたのが、やはり寅さん(編注:故・中村寅吉プロ)の言葉だった。寅さんが取材のときに「肩は回そうと思うから回らないんだよ。肩なんか回そうと思わないで、バックスウィングは腹を右に、フォロースルーでは左へ向けるんだよ」と、いっていたのを思い出した。

画像: バックスウィングでお腹を右へ、フォロースルーで左へ動かすことを意識すれば自然と肩も回る

バックスウィングでお腹を右へ、フォロースルーで左へ動かすことを意識すれば自然と肩も回る

私はいわれたとおり、肩を回すことや左ひざを前に出すことなど、いっさい忘れて、単純に正面に向いていた腹、つまりへそを右へ向けるだけの練習を始めた。

最初は右腰が右へ張り出す癖が出て、うまくいかなかったが、やっているうちにだんだん素直に体が回るようになった。写真を撮ってもらうと、多少、右腰の張りが見えるものの、アシスタントプロ氏が真似して見せてくれたほどの出っ張りではなかった。

その上、左肩は平らに回り、左ひざもへその回転に引かれて内側へ折り込まれる形になっていた。

私はこのときに習う順番を間違えたことを悟った。あまりにもプロのフットワークがきれいだったので、左ひざの動きがスウィングの主役だと勘違いをしていたのだ。先に練習すべきは腹の「右向け右」だったのである。

後に、小松原三夫プロから聞いた話だが、右腰が横に張り出し、左肩が落ちた逆体重の悪癖は、長引けば長引くほど直りにくく、再発の例も多いということだった。寅さんのおかげで「難病にかかる」寸前で回避できたのは幸せであった。

「ゴルフ、“死ぬまで”上達するヒント」(ゴルフダイジェスト新書)より

This article is a sponsored article by
''.