体を動かしながらアドレスする
つり革につかまらないで、電車が揺れても平気で立っていられるかどうか、それが中心感覚です。他にも日常生活の歩く動作、物を持ち上げる動作、何かをつかむ動作には、無意識のうちに中心感覚が働いています。
日常の動作では、中心感覚をつかむことができるのに、なぜゴルフのスウィングでは難しいのか。
それは、日常生活の中にはゴルフのように両手をひとつにして使う動作が少ないからです。また、体の動きが止まってしまうことで、中心感覚がとれなくなるということもあります。
アドレスで、ピタッと静止するように、体の動きを止めてしまうと、中心感覚をとりにくい。ですから、アドレスのときも、ずっと体が動いているのが理想的です。とはいっても、一度は静止動作をとらないと安心できないという人が多いと思います。
そういう人は、たとえばフォワードプレスなどで一瞬体を動かしたり、頭を少し動かしてみるだけでもいい。 一瞬動くことで、中心感覚がとれて調和した動きになるのです。それがリズムになり、心地よく円を描けるようになる。それを行う人が、心地いいゾーンに入ることができるのです。
イメージの中でボールを動かす
日常生活の中でスウィングの参考になるのは、「歩く」という動作です。
歩くことは、「中心感覚をつかむ」という意味においても、「体の動き」という点でも、いちばんスウィングに近いのです。歩くときに、どっしり構えて歩く人はいません。スッスッと歩くときのような、どこにでも動き出せるような感覚でアドレスし、スウィングします。ただし、実際に足踏みするわけではなく、イメージで動かせばいいのです。そうすれば、体がピタッと止まることはありません。
ボールは止まっているのに、「動いてしまっていいのか」と思われるかもしれませんが、ゴルフはボールが止まっているからこそしいのです。
動いているボールの場合、体が自然に対応しようとしますから、野球のように、動いているボールのほうが簡単です。
だから、ゴルフでも同じように、 ボールを自分のイメージの中で動かせばいいのです。アドレスしたときに、ボールが左右に動いているイメージを作る。そのボールの動きに合わせてスウィングするのです。
そして、たとえば周りの景色もイメージの中で動かしてみる。
ボールを動かすときのようにというより、歩いているときに見る景色の感覚です。アドレスしながら目線を動かしたり、雲や木を見たりして、ボールを見る。視線をいろいろなところに動かしてみると、体はナチュラルな動きになり、 動きの中でスウィングすることができるようになるはずです。
「これでいいの?これだけで飛ぶの?」(ゴルフダイジェスト新書)より
撮影/小林司