トミー・フリートウッドは世界ランク12位の現在のゴルフ界でも屈指のショットメーカーとして知られる選手。もともとナイキの契約選手だったが、ナイキのクラブ事業撤退後はクラブ契約フリーの有名プロの一人だ。そんなフリートウッドの14本は以下のように構築されている。
1W:テーラーメイド M3(8.5度)
3W:テーラーメイド M4
3W:タイトリスト TS3
5W:ナイキ ヴェイパーフライ
4I:ナイキ VRフォージド
5I〜9I:ナイキ VRプロ
48、52、56、60:キャロウェイ マックダディフォージド
※取材時は3番ウッドを2本入れてテスト。試合ではどちらかを抜くと思われる
クラブ契約フリーらしく、多くのメーカーのクラブが混在しているのが特徴。このセッティングからアマチュアの参考になる点はあるだろうか。プロゴルファーでクラブフィッターの関雅史に分析してもらおう。
「まず注目したいのが、アイアンセットのピッチングウェッジを抜き、48度のウェッジを入れている点です。ウェッジは『上げたいな』とか『転がしたいな』といった通りのボールが出やすいクラブ。それだけ感覚が伝わりやすいクラブです。ウェッジを4本入れるセッティングからは、非常にフィーリング重視であることが伝わってきます」(関、以下同)
関は、セッティングからフリートウッドを「曲げてゴルフを作りたい選手」と分析する。それはドライバー選びにも表れているという。
「テーラーメイドのM3は重心が浅いモデル。言い換えれば、マッスルバック的なフィーリングでスウィングできるドライバーです。マッスルバックはミスに対する寛容性が低く、球が上がりにくいなどのデメリットがありますが、構えを大きく変えなくても“あそこから曲げたいな”といった意思だけでボールを操れるクラブ。フリートウッドにとっては、寛容性よりも、自分の意思でコントロールできるほうが大切なんでしょう」
M3はウェートの位置を移動できるクラブだが、試合によってはそれを思い切り前(フェース寄り)
に持ってくることもあるフリートウッド。長髪をなびかせてプレーする独特の風貌も含めて、個性が光る選手だ。
「古いクラブを使い続けることもそうですが、古い=悪いではなく、手に馴染んだものを長く使うことにメリットを感じているのだと思います。気に入っているこれがあるから他はいらない、というシンプルな考え方ですね」
良いものを長く使い続けることで、手に馴染み、結果も良くなる。そんな当たり前のことを教えてくれる、フリートウッドのクラブセッティングだった。
取材トーナメント/WGC HSBCチャンピオンズ 撮影/大泉英子