高反発の黎明期を作ったキャロウェイとダンロップ
メタルウッドのフェースの裏側の凹凸が注目されたのは、キャロウェイのVFT(Variable Face Thickness/部分肉厚設計)フェースが最初だっただろう。
フェース肉厚を部分的に変えることで、日本市場向けのE・R・C、E・R・CⅡドライバーでは、とにかくフェースで実現できる最高反発を目指す。米国市場向けのホークアイVFTでは当時のUSGA基準内でのギリギリ反発を狙う。そのために採用されたテクノロジーだった。時期としては2000年〜2002年頃である。
2000年といえば、日本でもゼクシオ(ダンロップ)が誕生し、インピーダンスマッチングという独自理論にそったドライバーの開発が始まった頃。
その開発テーマもフェースの薄肉化(高反発化)だった。それに打点傾向にそってフェース設計を変えるという、オートフォーカス理論が合わさることで、結果的にはキャロウェイと同じような部分肉厚フェースを追求するようになっていた。
そのために素材や製法が進化した。フェースの肉厚設計が複雑化
フェースをより薄く作るために、フェースをボディと異なるチタン合金で作る。それが高反発時代(2000年前半)以降、当たり前になった手法だ。
打点による反発のばらつきを抑えるために、さらに複雑なフェースの肉厚設計が進められ、それを実現するために製法も鋳造から鍛造、薬品によるケミカルミーリング、コンピュタ制御による精密ミーリング加工まで、様々なアイデアでフェースのどこに当たっても、高いボール初速を発揮するための“凸凹裏のフェース”が生み出されていくようになった。
これがいわゆる高初速フェースが生まれ、広まり、定番化していった流れである。
2019年早々、ゴルフ界の話題をさらっているキャロウェイの「エピックフラッシュ」やテーラーメイドの「M5/M6」も、ざっくりといえば現行ルールを遵守しながら、どこまでフェースの反発を高めていけるか、それをAI技術だったり、これまでになかった調整法を使うことで達成していこうというものである。技術(手段/手法)は大きく変わったが、開発目的は従来と変わらないといえるのだ。
話題のニューテクノロジーだ!と騒ぎ、そこだけにフォーカスしてしまうと難しく、よくわからなくなってしまうのだが、各社が新手法を使うことで、従来掲げていた理想にもう一段近づいた、と考えればスッキリする。
ゴルフクラブのテクノロジーというのは、様々な制約を打破しながら、求める性能に近づくために生み出される。たとえば、同じようなフェースの反発を求めたならば、カップフェースにしたほうがてっとり早いという見方もある。
しかし、それでは生産コストがかかりすぎるから、コストをかけず安定して目標を達成できる新手法を必死になって模索。そうやって従来にない画期的なテクノロジーにたどりつくケースは非常に多いのだ。
話題の技術に期待しつつ、見極めたいのは、弾道変化
初めてフェアウェイウッドのソールに“溝”がつけられた時、開発者はこういった。「チタンで作っていいなら、こんな“溝”をつける必要はないのです。コスト上、安価なステンレスで作らないといけない中で、高価なチタンで作った時と同じようなリアクション、そして結果を生み出すためにはどうすればいいのか。その結果、たどり着いた新構造がソールの“溝”なのです」と。
様々な制約や思惑の中で生み出されるのが、最新テクノロジーである。我々ゴルファーは各ゴルフメーカーの企業努力に感謝しつつも、自分が打った弾道の変化にこそ最大の注目をしたいものである。新技術とはそのためにあるのだから。