試行錯誤の「回数」と「速度」を圧倒的に高めた
ゴルフクラブ開発にAIを取り入れたエピックフラッシュ。クラブ開発にAIを使うのは史上初とのことだが、そもそもなぜAIであり、スーパーコンピュターを使う必要があったのか。エピックフラッシュの新製品発表会に石川遼、上田桃子らとともに“AI有識者”として登壇したサイエンス作家・竹内薫はこう分析する。
「AIやスーパーコンピュータがあったことで、凄い回数の試行錯誤ができたわけですよね。試行錯誤は人間もしますが、時間がかかります。それに対し、機械学習というものを取り入れることで、試行錯誤の回数を多くできる。そして、1回あたりの試行錯誤のスピードを出すのに重要になるのがスーパーコンピューターです」(竹内、以下同)
クラブ開発には試行錯誤がつきものだ。1本のクラブを完成させるまでには数多くの木型や金型、あるいはプロトタイプを作り、ヒューマンテストを繰り返して最適なものを作る必要がある。フェース面ひとつとってもそれは同じこと。
AIとスーパーコンピューターの組み合わせは、その試行錯誤の時間を圧倒的に短縮(キャロウェイの説明によれば、通常のパソコンで34年かかるところを6週間で行ったそうだ)したことになる。
ただ、竹内によれば、「AIはただ試行錯誤をするだけ。なにを試行錯誤させるかは人間が決める必要がある」という。スマートフォンに話かけるように、「AIくん、飛ぶドライバーを作ってくれたまえ」といえば未来のドライバーができるかといえば、さすがにそんなことはないのだという。
「AIは道具ですから。『どうAIを使おうか』っていう人間の開発者のアイデア次第なんです。いいアイデアでもそれが実現するのに100年とかかってはダメですよね。それをぐ~っと縮めてくれて、さらに従来は職人技とされてきた微調整をやってくれるのがAIなんです」
どうAIを使うかがポイントとなる
「今はあらゆる企業が人工知能を導入して、いかに(業務を)最適化していくかという時代に入ってきています。ただ、それがゴルフ業界に及んだっていうのはビックリ」と竹内。これまで職人芸という印象が強かったスポーツの道具作りという分野において、AIを利用することによってイノベーションが加速する可能性は大いにありそうだ。
最後に、未来のゴルフクラブを考えてみた。
「何年後になるかわかりませんが、個別のゴルファーのデータを計測し、『あなたのための最適化された一番飛ぶクラブでです』っていう(クラブを開発する)のも、夢ではないかもしれません」
同じメーカーの同じブランドのドライバーなのに、ヘッドの内部構造やシャフトやグリップの重量が微妙に異なり、それぞれのゴルファーに最適化されている。そんな時代はもうすぐそこまで来ているかもしれない。