平均点の高いゴルフ
昨シーズン、賞金王に輝いた今平周吾。シーズンでの勝利は、10月にブリヂストンオープンで挙げた1勝のみでした。裏を返せばそれ以外の試合で、確実に賞金を積み上げられたということが言えます。国内ツアーに限って言えば出場した24試合で半分以上の14試合でトップ10に入り、予選落ちは5月のミズノオープン1試合のみでした。
昨シーズンの好成績は全体的に能力が押し上げられた結果だと言えるでしょう。自身として初めてフィジカルトレーナーを付けるようになったといい、スウィングチェックもこまめに行っていたようです。
シーズン中に今平のターニングポイントになったのが、7月に行われたセガサミーカップです。2位で迎えた最終18番ホール、セカンドショットを池に落とした今平は、ショットの後クラブでキャディバッグを叩きました。
「これまで試合中に怒りの感情を出すところを見たことがありませんでした。もちろん悔しがるようなシーンは幾度もありましたが、それを表に出さないタイプの選手なんです」こう教えてくれたのは専属キャディの柏木一了さんです。
「勝ちに対する執念を見ました。これが転機になったと思います」この3カ月後、今平はブリヂストンオープンで逆転優勝を果たしました。
課題はドライバーの飛距離
高校生のとき自らの意思でアメリカにゴルフ留学をした今平。「今後PGAツアーでのプレーも視野に入れています」(今平)と、賞金王になる前から、その目は海外に向いていました。
今回のソニーオープンのようにこれまでも何度かスポットで海外の試合に出場していますが、本格参戦前にこのような経験を積むことはプラスになるでしょう。それは国内ツアーでは見えてこない課題を把握することができるからです。
「アメリカでやるためには飛距離を伸ばさなくてはいけないと思っています」と本人が言うように、身長165センチの今平の平均飛距離は290ヤード前後。身長に対しては効率よく飛距離を出せていると言えます。日本ツアーでもこの飛距離があれば、昨シーズンのように上位で勝負をすることができるでしょう。
しかし本人も感じているように、PGAツアーでは平均300ヤード、距離を求めるときには350ヤード以上の飛距離を出すプレーヤーが多くいます。常に上位で戦うためには今の飛距離では難しいでしょう。
今平はドライバーからショートゲームまで、すべてにおいて平均的に能力の高いプレーヤーです。こういった選手がPGAツアーで結果を出すには、すべての能力の平均値をもう2段階くらい上げることが求められます。PGAツアーで言うと穴のないジャスティン・ローズのような選手です。
もし私が彼のコーチであれば、今の状態からさらに上を目指すための大規模なスウィング改造は勧めないでしょう。今持っている基礎を残しつつ、必要な上積みをすることでPGAツアーで通用するゴルフはできると思います。
今平は新しいトレーニングに着手したり、自らのスウィングをアップデートしようと挑戦を続けています。常に高いレベルを求めるその姿勢があれば、まだまだ成長の余地はあるといえるでしょう。
来シーズンも日本ツアーを主戦場にすることは変わりなさそうですが、そのプレー内容が一段も二段も向上していることを期待したいと思います。