平均飛距離318.2ヤードは出場選手中堂々のトップ
1960年、アーノルド・パーマーが大会初優勝を果たし、60回を数える歴史ある大会「デザートクラシック」。初日、今大会で2勝を挙げる48歳のフィル・ミケルソンが60という好スコアを叩き出し、2日目68、3日目66と若手選手たちを経験と技でねじ伏せて3日間連続で首位に立った。
「あまりオフの間は練習する時間も十分に取れなかったし、自分のゲームは錆びついていると思っていたけど、やってみないとわからないものだね。そんなに期待もしていなかったのに、いいショットが打てて、スコアもよかったよ」
今大会以前に2018-2019年PGAツアーに出場した試合は、ライダーカップ直後のセーフウェイオープン。17位タイで終了したが、その後は11月下旬に開催されたラスベガスでのタイガー・ウッズとのたった1日だけのエキシビション「ザ・マッチ」で勝利。以来、デザートクラシックまで約2カ月の長いオフを取った。その間彼が取り組んだことといえば、「トレーニング」。とにかく徹底的に取り組んだそうで、その甲斐あって力強さが戻り、ヘッドスピードが若かりし頃のものに近づいてきたと言う。
本人もデザートクラシック初日を終えた時の記者会見で、
「今ではとても距離が出始めている。飛距離が出るようになれば、その分フェード打ちをしてフェアウェイキープできるようになり、パットも決まってくるようになる。今年これができれば、いい年になると思うよ」
と語っているが、彼のデザートクラシックでの平均飛距離はなんと318.2ヤード。これは今大会で全選手の中の1位の記録だ。もうすぐシニア入りのミケルソンが、20代の若手たちを差し置いて、ドライビングディスタンスで1位である。ミケルソンの進化はすさまじい。
また、彼に取って長い休暇は精神的にとてもプラスに働いたようだ。
「今週こうして調子がいいのは、何カ月もオフを取り、リフレッシュできたことで非常に試合に集中できるようになったし、1打1打どんな球を打ちたいのかが明確になったということもある。どこに打ちたいのか、あるいはどこにはミスをしたくないのか。ミスしたとしても、ここならOKとか、そういうことを明確にして決め打ちすることができている。しかも、プレーすることに対してワクワク感がハンパないよ!」
単独首位で最終日を迎えたミケルソンは、アダム・ハドウィン、アダム・ロングという二人の若いアダムを相手に最終組で、最後の最後まで手に汗握る互角の戦いを繰り広げたが、アダム・ロングが優勝。ミケルソンのツアー44勝目はならなかった。
「パットが過去最悪。ひどい!1番なんて4フィートの上りを3パットしてしまった。簡単なパットだったのに……」
ここ数年改善が見られてきたと語っていたパッティングが、突如調子が崩れ、自滅。初日から首位を守り続け完全優勝を狙っていただけに、これは相当ショックだったろう。だが、いずれにせよ絶好調なことには間違いない。来週、ミケルソンの地元サンディエゴ開催のファーマーズインシュランスオープンでも大暴れしてくれることを期待したいファンも多いことだろう。
だが、翌週、ミケルソンは、1991年以来ずっと出場し続けてきたファーマーズインシュランスオープンを欠場する。28年間で初めての欠場だそうだ。すでにその発表は昨年10月にしていたというが、欠場の理由は「ラフの長さ」。トーリーパインズのラフは長めでタフであり、今年のミケルソンは長いラフのコースはプレーしないと心に決めているらしい。
「あの(トーリーパインズの)ようなラフのあるトーナメントには出ないよ。出ても(予選落ちだし)時間の無駄だ」
なんでもプレーしやすく、積極的に攻めてバーディがたくさん取れるようなコースに絞ってプレーすることにしたらしい。
選手たちはコースとの相性なども考えながら、どの試合に出るか、年間の出場試合計画を立てていくが、「ラフの長いトーナメントは出ない」と言うのはなんともミケルソンらしい発想。
ライバルのタイガーのみならず、他の選手でもそのようなことを口にした選手は記憶にない。ラフの短めな試合を選び、決め打ちした試合で優勝争いをすることができるのであれば、それはそれで正しい作戦なのかもしれない。今年の彼の「作戦」が功を奏するのか注目したい。