5メートルのパットを2メートルオーバーするタッチで打つ鈴木愛
ツアーでコンスタントに成績を残す、トップレベルの選手は、「これだけは他の選手に負けない」というストロングポイントを持っているもの。たとえば、男子プロだと、松山英樹のアイアンショットの精度、石川遼の100ヤード以内のアプローチ、稲森佑貴の曲がらないドライバー、時松隆光のパッティングなどなど。では、女子プロ選手の場合はどうだろう。
東浩子の専属キャディを務める、キャリア18年のプロキャディ・先崎洋之に聞いてみた。
まず、女子プロのなかで、もっともパッティングが上手いと思う選手は、2017年の賞金女王であり、今季はそのタイトル奪還に期待がかかる鈴木愛だという。
パットの名手として知られる鈴木愛。プロキャディの目から見てもやっぱりすごい（写真は2018年のスタジオアリス女子オープン 撮影/岡沢裕行）
「ボールの転がりがいいのは当然ですが、彼女の強みはしっかり打てるところ。5メートルぐらいのパットを、2メートルオーバーするぐらいのタッチで打ちますから。カップ1個分ぐらい切れそうなラインでも、カップを外さずに薄めに強く打てるので入る確率も高いし、オーバーしても、返しの2メートルをきっちり入れてくるんです。よほど自信がないと、あのパッティングはできませんよ」(先崎、以下同)。
また、今年でプロ転向12年目のシーズンを迎える、ベテランの佐伯三貴もパット巧者だという。
「球の転がりが抜群にいいんです。ボールがフェースから離れた瞬間から、順回転で転がり始めるように見えるんです。とくに、ロングパットがめちゃくちゃ上手くて、全盛期の頃は傾斜さえ読めれば、どこからでも入れてくる印象がありました」
右サイドに池があるグリーン右端のピンをドローで攻めるシン・ジエ
では、ショットの精度が高い選手は？ 先崎が真っ先に名前を挙げたのは、日米のツアーで通算25勝をマークし、2010年には世界ランキング1位の座にも輝いた、韓国出身のシン・ジエだ。
「彼女はドローが持ち球ですが、自分の球筋や曲がり幅がちゃんと分かっていて、それを完璧にコントロールする技術を持っているんです。たとえば、グリーンの右サイドが池で、ピンが右端に立っているような状況でも、平然と池の上からドローで回してきて、それがベタピンについたりする。自分のショットに自信を持っていて、調子が悪い時でも修正能力が高いんです」
正確無比なショットがシン・ジエの持ち味。2018年はパーオン率1位、フェアウェイキープ率は2位だった（写真は2018年の日本女子プロ 撮影/姉崎正）
そしてもう一人、名前を挙げてくれた選手は、先崎がバッグを担ぐ東浩子だ。
「昨シーズンはちょっと曲がることもあったけど、ドライバーショットの精度は女子プロのなかでもトップレベルだと思います。インパクトゾーンのヘッドの動きがいいから、ティショットは安心して見ていられるんです。周りの女子プロからも、ドライバーが上手だと、よくいわれますからね」
最後はアプローチだが、これも申ジエと同じ韓国出身のアン・ソンジュがいちばん上手いと先崎はいう。
「アプローチのバリエーションが豊富で、引き出しをたくさん持っているんです。特に、難しい状況になればなるほど、技術を発揮してくるタイプの選手。もう一人挙げるなら菊池絵里香も上手ですね。外してもOKの場所であれば、きっちりパーを拾ってくる。フェースにボールを乗せるのが上手くて、乗っている時間も長いから、距離感がピッタリ合うんですよね。女子ツアー開幕までは、まだ少し時間がありますが、そんな視点でトーナメントを観戦すれば、さらに楽しみが広がると思いますよ」
