右腰を後ろに引くように回していけば逆体重のトップにならなくてすむ
私には、ゴルフを始めたころからつきまとって、かなり後まで離れなかった悪癖がいくつかあった。あるときはプロや技術書のおかげでよくなったりしても、しばらくすると、また元に戻ってしまうということもしょっちゅうで、よくなったり悪くなったりの繰り返しといったほうがよいかもしれない。
トップの逆体重の癖もそのひとつだ。バックスウィングのトップで、両肩が平らに回らず、左肩がガクンと落ちてしまう癖である。
この悪い癖は、寅さん(中村寅吉プロ)のいう「腹を回せ」のアドバイスで、一度はよくなったのだが、1年も経たないうちに、また元の左への弓なりトップへ戻ってしまった。以前ほどひどい逆体重ではなかったが、ある日のこと、小松原プロの指摘で再発しているのがわかった。
小松原プロは、例によって「体操」での矯正の方法を教えてくれた。
まず、右手を横に広げて、指先が壁に触れる位置にスタンスをとってアドレスの構えをとる。次に上体を前傾したまま、今度は左手を回していって、指先を体の左にある壁につけるようにする。
言葉でいうと簡単だが、これがなかなかできない。何べんもやっているうちに右腰がつっかい棒になって、肩の回転を邪魔しているのがわかった。そこで右腰を後ろに引くように回しながら左腕を伸ばすと、いとも簡単に壁に触れるようになった。もちろんそのときは、両肩も両腰も平らに回転し、小松原プロに似たようなトップになっていた。
できたときの感覚は、今でもはっきり覚えているが「両肩は、こんなにも回すものなのか」ということだった。
今でこそ「バックスウィングのトップでは、左肩が右足に覆いかぶさる程度まで回す」などと、回転の限界を教えているが、当時の技術書には単に「あごの下に左肩を入れる」とか「左肩からボールを見下ろせ」くらいの表現しかなかった。
考え過ぎかもしれないが、昔は「はしか」のようにほとんどの人が「逆体重症候群」にかかったが、今では逆体重に悩む初心者が少なくなったような気がする。技術指導の進化が「逆体重」という言葉を死語にしてしまったのだろうか。私自身は逆体重トップの予防に、今でもときどき小松原体操のお世話になっている。
「ゴルフ、“死ぬまで”上達するヒント」(ゴルフダイジェスト新書)より