2016年に渡米し、米女子ツアー(LPGA)でトレーナーとしての活動を開始した斎藤大介。鍼灸師、指圧マッサージ師などの資格を有する斎藤の調整力の高さが評判となり、2018年からはリディア・コー、畑岡奈紗と契約。今シーズンは両選手を含む6選手と専属契約をしている。世界のトップステージで活躍をする斎藤トレーナーから、畑岡奈紗のフィジカル面の強さの秘密や、最先端のトレーニング事情について訊いてみた。

畑岡奈紗は「自分の体と会話する」能力が高い

――世界のトップ選手の仲間入りを果たしたといえる畑岡プロ。やはりフィジカル面でも凄い?

斎藤:自分の体に関する『気づき』の能力が高くて、「今日はちょっとダウンスウィングがおかしかったんですけど、体的にはどうなっているんですか?」という感じで質問をされます。お互いに意見を擦り合わせて問題の解決に向かえるので、トレーナーとしては凄くやりやすいんです。畑岡プロのように自分の体と会話が出来るセンスを持つ選手は、LPGAの中でも30パーセントもいないと思います。

――具体的に、どんなやり取りをしているんですか。

斎藤:畑岡プロやリディアとは、「パターの時のアドレスがしっくりこないんだけど」とか、「お尻が効いていない感じがする」とか、「下半身が浮ついた感じがする」といった「姿勢系(バランス)」に対する話が多いですね。

画像: 畑岡が米女子ツアー初優勝を成し遂げた「ウォルマートNWアーカンソー選手権」にも帯同し、サポートしていた斎藤(写真一番右)

畑岡が米女子ツアー初優勝を成し遂げた「ウォルマートNWアーカンソー選手権」にも帯同し、サポートしていた斎藤(写真一番右)

――そういった課題に対して、トレーニングメニューを組むわけですか。

斎藤:はい。飛距離を伸ばすために「筋肥大」を目的とした高重量の筋トレをする場合もありますし、一年間を通して戦える体を作る「コンディショニング」を中心にしたトレーニングもします。ただ畑岡プロの場合、ジュニア時代にナショナルチームでの経験から、そういったフィジカル面のベースがある程度は整っているので、その上でバランス系のトレーニングが出来るわけです。

画像: ジュニア時代からの積み重ねもあり、畑岡は「自分の体との会話が上手い」という

ジュニア時代からの積み重ねもあり、畑岡は「自分の体との会話が上手い」という

――そんな畑岡プロの現在のフィジカル面での課題は?

斎藤:速い筋肉(速筋)が優位な選手の特性で、筋肉が硬くなりやすく、疲れやすい部分があるので、朝のウォーミングアップとバランストレーニングは綿密にやります。片足立ちやバランスボールで姿勢をキープするコアトレとかストレッチがメインです。畑岡プロは、朝、僕と会う前に自分でウォーミングアップを30~40分くらいやってくるので、多分、朝の準備はLPGAの中でダントツで一番しっかりやっていると思います。

パワーか、スピードか。世界のトップの最新トレーニング事情

――現在、世界のトップはどんなトレーニングをしているのですか。

斎藤:たとえば、(米大リーグ、シカゴ・カブス所属の)ダルビッシュ有投手がやっている体を大きくする「筋力アップ」を図るトレーニングと、(同、シアトル・マリナーズ会長付特別補佐の)イチロー選手がやっている、柔軟性とスピードの向上を指向するトレーニングとを考えた場合、両方とも“正しい”わけですよ。それは選手によって体が違うし競技などによって目指す体も違ってくるからです。

ゴルフの場合も同様に、画一的なトレーニングから、よりパーソナルなトレーニングという流れになっています。コレというルーティン的なものではなく、その日のパフォーマンスがどうだったかということを徹底的に聞いて、翌日のパフォーマンスにフィードバック出来るようなトレーニングですね。

――さきほど出た「姿勢系」の次に来る、或いは既に来ているトレーニングを教えて下さい。

斎藤:飛距離アップのためには、アリヤ・ジュタヌガーンのように質量(体重)で飛ばすか、畑岡プロやリディアのようスピード(キレ)で飛ばすか、2通りのアプローチがあります。この体のキレを良くするのが、「神経系」といわれる筋肉の伸張と収縮の速さを向上させるトレーニングです。代表的なものが「プライオメトリクス」で、たとえば、箱の上から飛び降りて、両足で着地すると同時にすぐにジャンプをするトレーニングを繰り返すことで神経に刺激を与え、筋肉の収縮と伸長の速度をアップさせ敏捷性や体のキレがアップするというものです。

画像: アリヤ・ジュタヌガーンのように質量(体重)で飛ばすか、畑岡やリディアのようスピード(キレ)で飛ばすか。飛距離を伸ばすには、このどちらかを伸ばすといいと斎藤トレーナー(撮影/岡沢裕行)

アリヤ・ジュタヌガーンのように質量(体重)で飛ばすか、畑岡やリディアのようスピード(キレ)で飛ばすか。飛距離を伸ばすには、このどちらかを伸ばすといいと斎藤トレーナー(撮影/岡沢裕行)

プライオメトリクスは体に負担が掛かるので、体重が多い選手はあまり出来なかったりするんですけど。リディアはドンドンやりますね。畑岡プロも週に一回、主に火曜日にやりますし、本人が「今日はスウィングのキレがない感じがする」と感じた時に、その後にトレーニングで刺激を入れるようにしていますね。

――ゴルフに有効なトレーニングが絞られてきた感じですね。

斎藤:今までは飛距離を出すことを狙う場合、高重量でのスクワットなど遅いトレーニングをやっていたと思うんですけど、最近は同じスクワットでも、軽量の負荷でスクワットジャンプをするなど、スピード系も狙ったトレーニングが多くなっていますね。

――アマチュアゴルファーには、どんなトレーニングが有効なんでしょうか。

斎藤:ゴルフでは、まず柔軟性が大事、とくに上半身の柔軟性ですね。プロは体の柔軟性を確保したうえで、筋力アップを図ってトレーニングをするわけです。ここが伴っていないのにトレーニングをしてしまうと力の出し方などでマイナスになることがあります。本当に飛ばそう思ったら、アマチュアの男性なんかはストレッチを徹底的にやるのが一番効果的だと思いますね。あと、日本にも入ってきていますが、「スーパースピードゴルフ」のように、重さの違うスティックを段階的に刺激をアップさせるスピード系のトレーニング器具を利用するのも良いと思います。

HONMA

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