「この2本のパターだけは触れてはならない」とタイガーは息子に言った
タイガーはかつて息子のチャーリーにこういったという。
「他のパターはどれを触ってもいい。使っても遊んでも構わない。でも97年のマスターズで優勝したとき使った黒いパターとこれ(スコッティ・キャメロン ニューポート2 GSS)だけはなにがあっても触ってはいけない」
黒いパターとはスコッティ・キャメロンのトレリウムシリーズ。フェース面のインサートの打感がタイガーはことのほか気に入っていた。
そしてもう1本はメジャー14勝中13勝を挙げたニューポート2 GSS。孤高の王者にとっては不動のエースで昨秋このパターに戻したときには大きな話題になった。
最愛の息子に「触ってはいけない」といったこの2本。ゴルフの長い歴史のなかでもっとも重要な役割を担ったパターであることは間違いない。
しかしニューポート2 GSSと比べるとトレリウムのほうはやや日陰の身。弱冠20歳の若者が後続に12打差をつけゴルフ界の新時代の扉を開けたのは確かだが、主役の座はあっという間にニューポート2 GSSに奪われた。
そこでオークションの話。もちろんこの2本が売りに出されたわけではない。今回高額で落札されたのはタイガーがマスターズに勝つ前年(96年)に本人が実際使用していたトレリアムTel3プロトタイプ。マスターズの優勝パターの前身がこれである。
主催のグリーンジャケットオークションによると実際に試合で使われたこのパターが先ごろ2万2,784ドル(約250万円)で落札されたというのだ。
この金額を高いと感じるか安いと感じるかは個人差があるだろう。しかしタイガーが試合で一度も使ったことがないニューポート2 GSSのバックアップバージョンが以前(3年以内)オークションでそれぞれ6万ドル(約660万円)と4万4千ドル(約484万円)で落札されていることを考えると、本人が試合で使用したパターが250万円というのはお値打ちなのではないだろうか。