「ヤバい、無理だよ〜」と、嘆きの声をあげるのは、斉藤愛璃、村田理沙といった女子プロたち。何をしているかといえば、真っ赤な顔で風船をふくらませようとしている。
彼女たちはなにをしているのか? ズバリ、正しい呼吸法を身につけたり、腹圧を高めるためのトレーニングだ。植田とともに女子プロたちを指導したゴルフパーソナルトレーナー・小林彩佳によると、呼吸の仕方もゴルフのパフォーマンスに影響を与えるという。
「プロの場合、とくに試合などの緊張する場面では呼吸が浅くなりますよね。深呼吸で落ち着こうとしても、口で息をするだけになってしまいがちです。そのまま浅い呼吸を続けていると、その動きで肩が上がってきてしまいます。せっかく試合前のアップでゆるめた肩周りの筋肉も、そんな状態だと再び張ってしまい、試合に臨む状態ではなくなってしまいますよね」(小林)
試合でベストな状態を作るには、正しい呼吸法を覚えておく必要があるということ。そのためにまず小林が用意したのは、「ストロー」だ。
仰向けの状態でストローを口にくわえ、鼻で吸った息をストローから吐いていく。ポイントは長い時間をかけて吐くこと。この正しい呼吸で息を吐いていくと、お腹の内側にある変化が生じるという。
「鼻から吸って口から吐くと、最後に息を吐き切った時にお腹が凹みます。これが『腹圧』がかかっている状態です」(小林)
腹圧とは腹筋と横隔膜の収縮によって生じる腹腔内の圧力のこと。腹圧がかかることで背骨が内側から押されて姿勢がよくなるだけでなく、「腹圧がかかった状態で体幹トレーニングを行うことで、より高い効果が得られます」と小林トレーナー。
そこで登場したのが風船というわけだ。これを、先ほどのストローと同じ要領で膨らませていく。
西山ゆかり、照山亜寿美、山城奈々たちが次々に風船をふくらませていく中、これに大苦戦したのが斎藤、村田、長田若菜の女子プロ3人。しかし、普段からトレーニングを積み、アップダウンの激しいゴルフ場でも歩きでラウンドする女子プロたちでも風船をふくらませられないとはちょっと意外だ。
これについて「深層部を使って動作につなげていくことが重要なんですが、普段の呼吸の仕方や生活習慣などによって(腹圧をかける)機能が失われやすい」と植田トレーナー。トレーニングがしにくいインナーマッスルを使うので、普段から意識していないと衰えてしまいがちだという。
立った状態でふくらませ、寝てふくらませ、寝て腕を挙げふくらませ……とメニューを消化していく過程で、斎藤も村田もふくらませるコツを会得。他のプロたちがメニューを消化しきった後も一人風船と格闘していた長田も、最後にはふくらませることに成功し、全員から祝福されるというシーンも。このあたり、さすが女子プロのど根性だ。
さて、「腹圧」を高めることは、姿勢が良くなることにつながるため、もちろんアマチュアにも効果アリだ。みなさんも、女子プロのようにまずは風船をふくらませてみてはどうだろうか。ただし、想像以上にキツいので、くれぐれも注意して行ってください。