2019年新ルール施行から早2ヶ月余り、徐々にゴルファーの間に定着しつつある。ピンを差したままプレーするゴルファーも日に日に増えているようだ。そんな折、競技ゴルファーを中心に頻繁に話題になっているのが、「クラブレングスを計測するのは、ドライバーでなければならないの?」という問題だ。そこでトレンドウォッチャー・児山和弘が解説する。

いちいちカートにドライバーを取りに行く必要はない

ご存知のように、ルール上の救済を受けたり、ティイングエリア(※昨年まではティインググラウンド)の範囲を決める際は、クラブの長さ=クラブレングスを用いている。カート道路や池など、プレー中にその範囲を決める局面は多い。例えばカート道路なら、ニアレストポイントからホールに近づかない範囲で1クラブレングスだ。

これまではクラブレングスを測る際、その場にあるクラブを使うことが多かった。しかし、今年から施行されたルールでは、「プレーヤーが持っている最も長いクラブ」で計測しなければならないというのだ。ほとんどのプレーヤーにとって、それはドライバーになるだろう。

ウェッジやパターしか持っていないグリーン周りでも救済の処置を受けるケースは多い。その時にわざわざドライバーを持ってこなければいけないとなると厄介だ。もしそうなら大変な改悪になる。

画像: 救済を受ける際に、カートからドライバーをわざわざ取りに行く必要はないという(写真は大澤進二)

救済を受ける際に、カートからドライバーをわざわざ取りに行く必要はないという(写真は大澤進二)

しかし、結論から言うとその必要はない。

今回のルール改正の要諦はクラブレングスを計測するクラブの長さが、常に同じになるということだ。旧ルールではクラブの種類を限定していなかったので、処置の際に計測するクラブの長さが変わってもOKだった。新ルールでは、計測の際は常に同じ、つまり一番長いクラブの長さになるということだ。

グリーン周りでウェッジしか持っていない場合、救済を受けるために1クラブレングスを計測するとする。ドライバーをわざわざ取りにいかなくても、ウェッジの長さ内にドロップすれば、必然的にドライバーの長さ以内になるはずだ。

加えて言えば、ウェッジの長さからさらにグリップ一本分長いくらいが、よくあるドライバーの長さなので、それで目安とすることも出来る。ルール上は、必ずしもクラブを地面に置いて測らなくても、目測でエリアを把握してもいい。基点の近い所にドロップしておけば、厳密に測らなくても1クラブレングス以内にあることは自明だろう。

ここが最も大事な点だが、プレーヤーが把握して置かなければならないのは、(ルール上定められたクラブレングスの長さになる)一番長いクラブで計測した際の救済エリアの範囲にドロップした球が落ちて、その救済エリア内に止まっているかということだ。

必ずしもドライバーで測る必要はないし、クラブを置いて厳密に測る必要もなければ、基点をマークする必要もない。要は正しい位置にドロップされたボールをプレーしていることが大事というのが、新ルールの考え方になる。

トラブルを避けるため、つねにドライバーを持参して計測するという人もいる。たしかに頻繁に起こることはないだろうが、ドロップした球が思った以上に転がった時、一番長いクラブの長さに収まっているのか微妙なケースがあるかもしれない。

画像: JGA(日本ゴルフ協会)が配布している新ルールのパンフレットの「24」が競技ゴルファー内で話題になっている

JGA(日本ゴルフ協会)が配布している新ルールのパンフレットの「24」が競技ゴルファー内で話題になっている

それにしても、なぜこうした誤解が広まっているのだろうか。その原因の一つと思われるのが、JGA(日本ゴルフ協会)が配布している新ルールのパンフレットだ。大多数のゴルフ場で掲示されており、眼にした人も多いだろう。

この冊子にはこう書いてある。

「規則に基づいてクラブレングスを計測する場合(中略)、プレーヤーが持っている最も長いクラブ(パター除く)で計測しなければなりません。救済処置によって短いクラブで計測することはできません。」

これを素直に読むと、最も長いクラブ、つまりドライバーで計測しなければならず、その他の短いクラブではダメと書いてあるようにも理解できる。これを読んだゴルファーの口コミなどによって、この誤解が今も拡散しているのではないかと思われる。もちろん、文章の本意はそうではないようだが。

プロの試合でも何かと話題の新ルールだが、この件もランチの際の話題にしてみてはどうだろうか。今も誤解しているゴルファーが意外と多いかもしれない。

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