用具の無償提供、コースの受け入れ……産学連携の試みが進んでいる
「プロゴルファーを作ろうとか、ゴルファーを増やそうではなく、あくまでも生涯スポーツを推奨する中の一つにゴルフがあるという立場」というのは、大学ゴルフ授業研究会の世話人会代表を務める武蔵野美術大学の北徹朗准教授。
人生100年時代と言われ、生涯スポーツの重要性が叫ばれるなか、長い距離を歩くゴルフは年齢を重ねても続けられるスポーツのひとつ。それを学生のうちに触れておくのは価値のあることと言える。
とはいえ、学生にゴルフをさせるのは簡単ではない。まず、十分な数のクラブがない。
「大学で使用されているゴルフ用具が古く、危険だったり、左利き用や、レディースクラブがないといった問題がありましたた。これじゃあゴルフを逆に嫌いになってしまう。そこで、クラブは日本ゴルフ用品協会さんを通じてメーカーから無償提供してもらっています」(北准教授)
もちろん、すべての大学に十分に行き渡っているわけではないだろうが、現時点で49大学に3000本近いクラブが提供され、ゴルフ場でのラウンド用に、156セットが提供されているという。これには、メーカーが販促用に用意している“試打クラブ”が主に活用されているようだ。
クラブがあっても、次は場所の問題がある。授業は大学のテニスコートやグラウンド、体育館を使って行われるが、やはりゴルフはゴルフ場でプレーするのが醍醐味。そこで、ゴルフ場に働きかけて、学生にゴルフ場でのプレー機会を提供する「Gちゃれ」という試みもスタートし、ゴルフ場にデビューした学生は述べ1000名を超えるという。
また、初心者の学生でもすぐにゴルフを楽しめるように、ブリヂストンスポーツの協力のもと、初心者用ゴルフクラブの開発も進められている。学生を受け入れる側のゴルフ場も、このような試みを歓迎しているようだ。
「ゴルファー創生の役に立てるということで、クラブとして業界に役立てるチャンスがもらえたと思っています。まだ2階しか(受け入れを)やっていませんが、何度もやりたいと思っています」(上野原CCの小見戸哲支配人)
ただし、コースに来るのがほとんど初心者の学生ということで、最初はやはり混乱もあったようだ。
「(初開催時は)ゴルフウェアは着ておらず、Tシャツあり、Gパンありという服装でしたので、クラブの会員には最初趣旨を一人一人説明する必要がありました。第1回目は、スタートしてから1ホール終わるのに45分。これはどういうことになるんだろうと思いましたが、少しずつルールを改正しながらやっていって、今は1ホールに20〜25分で、進行もスムーズ。スタッフにも理解してもらって、ゴルフ場の施設を理解してもらうべく、風呂まで浸かってもらっています」(八王子CC佐々木進一支配人)
学生の受け入れには、コースの会員や、結果的に労働時間の長くなるスタッフの理解も必要となるが、学生時代にゴルフの授業を経験したゴルファーは、卒業後にゴルフをする率が男子で約50%高まるというデータもあるというだけに「ゴルフ活性化のためなら」と受け入れるケースが多いようだ。
学習院大学の高丸功教授の調査によれば、大学でのゴルフ授業を通じてゴルフ場でのプレーした学生たちのうち、84%が「とても楽しかった」、64%が「とても興味を持った」とアンケートに答えたという。ある程度ボールを打つことができれば、ゴルフ場でのプレーは文句なく面白いのはゴルファーなら誰もが知っていること。
ただ一方で、クラブに関する質問に「自分のものが欲しい」と答えた学生は38%で、借りられるものなら借りたいと回答したゴルファーのほうが多い。北教授の調査でも、やはり費用面はゴルフを継続して行う上での懸念材料となっているようだ。ただ、ゴルフは非常に長い期間楽しめるスポーツ。“いつかプレーしよう”と仮に学生が思うとしたら、それだけでも価値があることだろう。
大学のゴルフの授業をきっかけにゴルフを継続していきたいと回答した学生の意見の中には、「父や祖父とゴルフをしたいから(続けたい)」という意見も散見された。子どもがこの春から大学だ、という方は、このときがお子さんやお孫さんと一緒にゴルフを楽しむ、千載一遇のチャンスかも。
「せっかくだから、ゴルフの授業とったらどうだ?」と一声かけてみてはいかがか。
(画像は大学ゴルフ研究会主催のシンポジウム『課外授業でコース体験1000人突破 ぼくらが「ゴルフ」を選んだワケ』でのプレゼンテーションより)