スウィング体力をつけよう
スウィング体力とは、スウィングを心地よく継続できるような体力のこと。たとえば、筋力が強いとか、スクワットが何回できるかというような、数値で測れるようなものではありません。そういうものは10代、20代なら鍛えればいいのですが、40代、50代、60代の人が過剰なトレーニングをすると、体を壊してしまいます。
スウィング体力は、走ったりして基礎体力を上げて鍛えるものではなく、ただ歩くだけでついてきます。中心のバランスをとれる体力であるスウィング体力がつけば、継続して安定したスウィングができ、さらにそのスウィングが長続きして80歳でも90歳でもできるようになるのです。
歩くという動作には、スウィングに効果がある重要な要素が含まれています。たとえば、トーナメントでプロが歩いている姿と、アマチュアがコンペで歩いている姿を思い出してみてください。プロの歩き方はカッコいいと思いませんか。
プロの試合に行って何を見てもらいたいかというと、歩き方です。プロは歩き上手です。スウィングのような体重移動がきちんとなされ、一歩一歩のキレが違います。ただカッコつけているわけではありません。自然にそうなったのです。シニアになると、それがさらにはっきりします。シニアプロのトーナメントを見ていると、アマチュアの50代、60代とは歩き方が全然違います。
いい歩き方は、体をねじらない、筋肉を痛めない、体に負担がかからずに長持ちする歩き方です。歩き方とスウィングは一緒で、歩いてきて、立ち止まって、打つまで、動作に一連の流れがあります。
しかしアマチュアの場合は、歩行とスウィングとがまったく別物になってしまうことが多い。歩いてきたときのような自然なウェートシフトに任せてしまえばいいのですが、構えに入ったら、体に負担のかかるねじれを入れるなど、 不自然な動きになってしまいます。
歩き上手の人は、頭のリードも優れています。歩き出すときは、まず頭が動くことによって、腰や足が動き出すのです。ところが頭が止まったままだと、 腰や足の力で地面を蹴らなくてはならないし、踏ん張らなければならない。そうなると、ひざや腰に負担がかかります。頭のリードがあるからこそ、体に負担のかからない歩き方になっているのです。
頭が動くことで、体に一瞬アンバランス状態が起きますが、そこでバランスをとろうとすることによって、中心点が決まります。中心のバランスがとれれば、あとは腰も足も手も効率的に動いていくのです。
スウィングでも同じことがいえます。歩くことによってスウィング体力が磨かれます。歩き方こそが、上手くなる人とならない人の分かれ道でもあるのです。
頭を動かすことでスウィング体力がつく
木と添え木を考えてみてください。苗木のときは添え木はいりません。添え木をしなくても自分の力で根を張っていくからです。ところが、成長期の木を移植するときは、根を張るまで添え木をします。そして根を下ろしたところで 添え木を外します。
ゴルフの場合は、「頭を動かすな」といって苗木に添え木をしてしまってい ます。添え木をされて頭を動かせないから、体力がつかないのです。
頭を動かさず、いろいろなことを覚えたけれど、根は下りてなかった。その状態で添え木を外されて、そこでハンディが伸び悩む。動きに遊びの部分を持たないと、体も強くならないし、スウィングのバランスもとれないのです。
頭を動かすことで、スウィング体力はつきます。最初は大きく動かしていて も、中心感覚が取れるようになってくると、だんだん小さくなっていきます。 そうなるためには、実際にスウィングすることも大事ですが、なにより歩くことが大切。いい歩き方をすることで、 頭がリードする感覚、体重移動の感覚を体の中に覚えこませていくことです。
足が出るだけではなく、腰も一緒に乗っていくようないい歩き方をマスターするために、両手を太股につけて歩いてみてください。頭がリードする感覚、ウェートシフトの感覚がよくわかります。
手を太股につけたまま少し急ぎ足で10~20メートル歩き、そのあたりで手をリラックスして振ってみてください。今までよりロスのない負担のかからない 歩き方になっていることを感じられますよ。
「これでいいの?これだけで飛ぶの?」(ゴルフダイジェスト新書)より
撮影/小林司