ベストスコアを更新できると思った瞬間欲が出て叩いてしまうことはよくある。ツアー30勝のレジェント・倉本昌弘は優勝が決まる瞬間まで「勝利の女神」に話しかけるという。自身の著書「本番に強くなるゴルフ」から優勝争いでの戦い方を教えてもらおう。

勝利の女神にお伺いを 立てながらラウンドする

流れに対する考え方は人それぞれにあって、尾崎(将司)さんには尾崎さんの、中嶋(常幸)さんには中嶋さんの、青木 (功)さんには青木さんの考え方があるだろうし、ひょっとしたら考えていないかもしれない。だから、ここからは私の個人的な考え方についてお話ししようと思います。

まず、私個人としては、流れを非常に大切なものだと考えています。もちろん、流れをよくするのも悪くするのも自分であって、自分の心と行動が流れをよくも悪くもすると思うのですが、「勝利の女神」というものも意識します。

よく、「勝利の女神が微笑む」とか、「両手の透き間から逃げていく」などと言いますが、私の経験として、勝利の女神が逃げていくパターンの中でいちばん多いのは、自分が欲張ったときです。これは攻め方だけではなく、ショットの結果や、勝利やスコアに対するものも含めて、欲張ったときが危ない。

画像: 謙虚にプレーするからこそ勝てる(写真は倉本が初日に『59』を出して勝利をつかんだ2003年のアコムインターナショナル 撮影/姉崎正)

謙虚にプレーするからこそ勝てる(写真は倉本が初日に『59』を出して勝利をつかんだ2003年のアコムインターナショナル 撮影/姉崎正)

それと、試合の中で勝利の女神の後ろ髪をつかんだと、つまり、「勝てるかもしれない」 などと感じたときのほうが、するっと抜けて逃げていくことが多い。それは油断なのかもしれません。しかし、そういう言葉だけでは表現し切れないことも起こるわけです。

たとえば、優勝争いをしている相手が18番でミスをしてグリーンを外す。これで決まったかなと思った瞬間、そのアプローチがカップインして形勢が逆転してしまう。そんなシーンを、みなさんも見たことがあるのではないでしょうか。

だから私は、優勝が決まる瞬間まで、「本当に私でいいんですか?」「本当に私が勝っていいんですか?」「私が後ろ髪をつかんでいいんですか?」と、 女神に話しかけながらプレーするようにしています。それは大きくリードしていても同じです。優勝争いをしているときほど慎重に謙虚に、勝利の女神にお伺いを立てながらプレーする。それは基本的には自分と対話しているということでもあるわけです。

そうすると、「今回はお前に勝たせてあげよう」という結果になることもあるし、「今回はお前じゃないんだよ」なんて声が聞こえてきたりもする。

たとえば、優勝争いの中で最高のショットを打ったら、ボールがピンに当たって弾かれ、バンカーにつかまってしまったりする。そうすると「あれ? これって何なんだろう? 今回(勝つの)は俺じゃないのかな?」などと思うわけです。そんなときこそ、慎重に謙虚にプレーする。表面は怒っていても、心のどこかで、謙虚にいこうと思う。それで、目の前の1打をしっかり寄せていこうと思って打ったら、直接カップインしたりする。

流れが来ていないように思っていても、結果的に来ることもあるわけです。もちろん、そのまま流れが来ないで負けることもあります。ただ、欲を出して無理に攻めて、寄らず入らずのボギーなど打ったりしたら、それこそ流れが悪くなってしまう。やっぱり、勝利の女神というのは、欲を出すと逃げる。それは避けたいのです。

「本番に強くなるゴルフ」(ゴルフダイジェスト新書)より

画像: プロゴルファーはどんなクラブを選ぶの?幡野夏生と井上透コーチが徹底解説!~これってどうしてる?#12~ youtu.be

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