プレーファストはゴルフマナーの基本だが、早くプレーするとどんないいことがあるのだろうか? マナー研究家・鈴木康之の著書「脱俗のゴルフ」から、プレーのペースにまつわるエピソードを紹介。

早打ちのトク 遅打ちのソン

ベトナム反戦デモが頻発していた頃の一九六九年、ロサンゼルス市で「GO! GO!GOLF」というプロモーションが行われたと、スポーツ・イラストレーテッド誌が伝えたことがあります。

当時、米国の全人口とコース数の比率は二万人に一コースでしたが、過密都市のロスでは市民と市営コースの比が十六万人に一コースと、絶対量が不足していました。

市のリクリエーション施設部門のマネージャー、レイ・ゴーツ氏は常日頃から「ハンディキャップ20の者が全米オープンに出ているかのような格好をするな」と叱る人で、スロープレー退治の推進者でした。氏が発案した「GO! GO! GOLF」が発表されると、全市営コースに約四千人もの市民が集まりました。

ティインググラウンド(※編注:現在はティイングエリア)には、「テレビ・ゴルファーになるな!」「このホールは八分でプレーせよ」「しゃべっている間も早く歩け!」などのボードが立てられました。マーチングバンドが二拍子でゴルファーたちの尻を叩く、とまではしませんでしたが、さもありなん雰囲気。

画像: コースでは走らなくても、キビキビと行動するだけでプレーファストは実現できるものだ

コースでは走らなくても、キビキビと行動するだけでプレーファストは実現できるものだ

さてその大会の成果。一番早い人は一時間四十四分、平均が三時間二十七分でした。ゴーツ氏の意図は大当たり。なんと参加者の半数以上が普段よりいいスコアだったとありますから、ゴーツ氏の顔には「そーらみろ」と書いてあったことでしよう。

ゴーツ氏によると、一ラウンドにつき一時間節約できると、ロス市内の市営コースは年間三十万ラウンドの節約ができ、これは市にとって新コース三つの建設の分の節約になるという計算でした。

プレイ・ファストは節約になり、スロープレーはコスト高につながります。六分間隔を七分間隔にすると、年間の入場者数を七千人ほど減らさなければなりません。その分、入場者のプライス高につながります。

以前、日本のゴーツとも言うべき高松志門プロの発案で、ハーフ二時間を超えたら一分につきプロに一罰打がつくというプロアマ戦が行われ、私も招かれて行ってきました。電磁誘導の乗用カートはあるものの、けっこう起伏のあるコースでした。

コース側はハーフ二時間は難しいでしょうと言っていましたが、ほとんどの組が二時間で回りました。私の組は藤池昇龍プロと私に、ダファーとビギナー、おまけにキャディは未熟なアルバイトで、私は彼らの世話でてんてこ舞いをしましたが、制限時間で回りきり、プロに罰打はつきませんでした。

のろのろゴルファーは周りやコース全体への気が働かない、自分のことしか考えない性格の人なのだと言われます。そうだとするならこう言ってあげましょう。「早く歩くほど有酸素運動になり、足の衰えの予防になるんだよ」「ショットに時間をかけるほど筋肉が硬くなってミスが出やすいんだ」「パットは時間をかけるほど心臓に負担がかかって、危ないんだよ」と。

プロゴルファーがボールの前に立ってから五秒後に何をしているかを調べた記事も昔ありました。遅いプロは五秒後もまだ旗を見ているが、ビリー・キャスパーはとっくに打ち終わっていて、次のプレーヤーに打順を譲っている、とありました。

「脱俗のゴルフ 続・ゴルファーのスピリット」(ゴルフダイジェスト新書)より

撮影/矢田部裕

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