「ドン底を経験」したことで、「自分のゲーム」を知っている
畑岡奈紗のゴルフと聞いて、豪快なドライバーショット、そしてキレキレのアイアンショットを思い浮かべる人は多いはず。しかしレックス倉本は、畑岡のゴルフをショット力に頼ったゴルフではなく、ショートゲームを中心に守りながら攻める「勝ち方を知っている」ゴルフだと分析する。
「日本では、飛距離も出るし、女性的というより男性的(なゴルフ)という印象が強いと思いますが、今回の勝った試合を見ていると、彼女は基本的にショートゲームからゲームを作っています。
生命線であるウェッジを前提にゲームを構築できている。だからこそ、守るところ、守りながら攻めるところといった、自分のゲームが本当にできていると思います」(倉本)
実際、米女子ツアーの公式データを見ても、畑岡のデータには意外なこと抜きんでたものがあるわけではない。ドライバー飛距離も米女子ツアーでは並、パットの指標や、スコアリングの指標に至るまで特筆すべきものがないにも関わらず、結果を見れば2年連続のツアー勝利を挙げ、賞金ランクは6位につけている。

平均飛距離259.81ヤードの畑岡だが、倉本によればドライバーショットはもっとも力が入っていないという(写真は2019年のダイキンオーキッドレディス 撮影/岡沢裕行)
「彼女のすごいところは、ティショットが一番力が入ってないんですよ。ドライバーでは70〜80の力で打っている一方、ウェッジは100〜70くらいまでコントロールできている。ウェッジにすごい技の幅があるんです。そしてパッティングに関してもすごい感覚の持ち主。さらに、それでもタッチが出ないときは、出ないときなりにそれなりにやろうというように、自分のゲームを把握できている」(倉本)
“自分のゲームを把握できている”からこそ、調子の悪いときは悪いなりにプレーし、いいときにはアクセル全開で踏み込める。それが、既存の指標では測れない畑岡奈紗の強さの正体であるようだ。
畑岡奈紗は、先週優勝した河本結や、同組でプレーした臼井麗香、さらには勝みなみ、新垣比菜、松田鈴英、小祝さくら、原英莉花、三浦桃香……と数えあげればキリがないほど有力選手の名前が挙がる98年生まれ世代の「黄金世代」の一員(畑岡、三浦は99年の早生まれ)。倉本は、その世代の中で畑岡が実績的に突き抜けている状況をこう語る。
「やっぱり、米女子ツアーのルーキーイヤーであれだけドン底(7戦連続予選落ちを喫するなど、ランク140位)を経験して、その1年で自分のゲームを見つめ直していると思うんですよね。黄金世代とひとくくりにしては申し訳ないけど、(多くの選手が)自分のゲームを見つめ直す時間、ゲームの裏付けを作る時間を過ごしていないと思うんです。それを作ろうとすれば、ゲームを見失うこともある。畑岡さんの場合、ひとまわり経験しての今の彼女。だからこそ、抜きん出た存在になっているんだと思います」
世界ランクで畑岡奈紗の上には、パク・ソンヒョン、アリヤ・ジュタヌガーン、ミンジー・リーという強豪中の強豪3人しかいない。しかし、今の畑岡奈紗なら、この3人の誰が相手でも……と思わせる強さがある。どこまで突き抜けていくのか、NASAの勢いは止まらない。
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