創業者の父はテーラーメイドの創始者
先般行われたジャパンゴルフフェア2019で、奇妙なパターを見つけた。「ブラッドライン」という名のそのパターは、驚くことに地面に置くとそのまま自立できるのだ。
「パターを立たせられるからといって、何になるんだ」と考える向きがいるのも無理はない。使い方を説明しよう。まず、いつもと同じように目標に対してアドレスする。パターはその状態で自立するので、手を離して自分はボールの後方に立ってみる。そうすると、パターが正しく目標に向いているかどうかを自らチェックできるというわけだ。
例えば、後方に立ってみて、目標より少し左を向いていたとしよう。その時はパターを少し右に動かして目標に向くように修正する。後方からなので狂いはない。あとは、もう一度アドレスに戻って、パターが向いた方向のままストロークすればいい。つまり、パッティングの方向性を自分でチェックできるという機能なのだ。
ブラッドラインパターが自立するのは、重量をヘッド寄りに寄せているため。パターのバランスポイントは通常よりもずっとヘッド寄りの低い位置にある。シャフトやグリップは軽く作られているはずだ。
余談になるが、知名度はほとんどないものの、国内にも『ブラッドライン』のように自立するパターが過去に存在した。筆者の知る限り、「Tachi masse(タチマッセ)」や」ロックオン TAWARA」など複数の自立するパターが販売されている。一応、これらをオークションサイトや中古ゴルフショップのサイトで探してはみたが、現在取扱されている在庫はなかった。入手するのはなかなか難しそうだ。
筆者も「ブラッドライン」を試してみたが、自分が真っ直ぐと信じて構えてみても、後方から確認するとフェースはやや左を向いていた。私の場合、そこから右にボールを打ち出しているようで、結果として真っ直ぐになっていたようだ。後方に立ち、フェースを目標方向に合わせてから打つと、ボールはほぼカップの右に外れた。
それほど上手くはなくとも、特にパットが苦手ではなかったので、このチェックは筆者にとってショックだった。自分の意識の中では真っ直ぐ構えて、真っ直ぐ打っているつもりなわけで、本来の正しいスクエアアドレスで構えると、右を向いているように感じられる。カップ方向に打ち出すには自分では引っかけているようにしか思えない。物理的なスクエアと、自分の意識の中でのスクエアに誤差が生じてしまったわけだ。
これは自分の手には余ると思い、普段コーチを受けている大本研太郎プロに相談した。大本プロは昨年のPGAティーチングプロアワードで最優秀賞を獲得し、現在も多くのツアープロをコーチしている凄腕だ。特にパッティングのコーチに定評がある。
大本プロいわく「ショットにも悪影響が出るので、あまり直さないほうが良いと思います。ただ、フェース向きの誤差は1度以内に収めることが理想です」とのことだった。自分の感覚にずれていることを取り入れるのはリスクがあるが、やはり物理的な誤差は少なくしたほうが良いようだ。
一見、色物にも見えるブラッドラインパターだが、共同創始者のブラッドリーの父親は、1979年にテーラーメイドの創設者となりメタルウッドの時代を作った、かのゲーリー・アダムス。
祖父もレッスンプロとして成功を収めた人で、親子三代の由緒正しい血統(ブラッドライン)が、ブランドのアイデンティティになっているという。
すでに昨年、ビジェイ・シンが愛用するなど海外ではシリアスゴルファーに認知されつつあるようだ。プロが試合で使っていることからもわかるように、パターはルール適合だ。後方で本人がパターの向きをチェックするのもルール上問題ない。しかし、パットのたびに後方でチェックしていたら同伴プレーヤーからの顰蹙は必至。アライメントのチェックは練習グリーンで行いたいものだ。