「プラス2番手の飛び」をコンセプトにぶっ飛び旋風を巻き起こしたヤマハインプレスUD+2。このモデルを皮切りに流行するストロングロフトアイアンの選び方をギアライター高梨祥明が考察する。

超ストロングロフトアイアンを新しい視点で見つめてみる

7番アイアンのロフトが26度という大胆な設計ながら、大ヒットを飛ばして話題となったのが、ヤマハのインプレスUD+2である。これ以降、ブリヂストンのツアーB JGR HF1(#7:26度)、ダンロップ・ゼクシオクロス(#7:25度)など各社からニューモデルが登場し、超ストロングロフトアイアンは完全にアイアンカテゴリーのひとつとして定着したようだ。

画像: プラス2番手の飛びでぶっ飛び旋風を巻き起こした「ヤマハインプレスUD+2」(写真/三木崇徳)

プラス2番手の飛びでぶっ飛び旋風を巻き起こした「ヤマハインプレスUD+2」(写真/三木崇徳)

しかし、もともと7番アイアンのオリジナルロフトは35度前後だったのだ。それを知っている昭和世代には、アイアンのロフトがどんどん立っていくことに懐疑的なゴルファーが多い。

「それは結局、7と書いてある5番でしょう?」
「飛ばないなら番手を上げればいい」
「アイアンは飛びじゃない」

などなど、いろいろな意見が飛び交っている。かく言う筆者も、最近まで超ストロングロフトモデルに対しては、「7と書いた5番」と思っていたクチである。

しかし、最近、超ストロングロフトモデルに対する見方を意識的に変えてみた。すると、超ストロングロフトモデルはあって然るべしだなぁと思うようになったので、今日はその新しいアイアンの見方について紹介してみたいと思う。

ドライバーなら自然にロフトを選ぶが、アイアンだと○番はロフト◯度になる不思議

ポイントはずばり”インパクトロフト”である。そのアイアンでボールを打った時に、実際に何度でフェースに当てられているのか。カタログに載っている静的なロフトではなく、動的なロフトを注視する。そうすることで、超ストロングロフトモデルへの理解度がグッと高まるような気がするのだ。

例えば、米男子ツアー屈指のロングヒッター、ダスティン・ジョンソンは10.5度のヘッドを11.5度に調整したドライバーを使っているといわれている。彼はインパクトでロフトが立ちやすいスウィングであり、そもそものロフトを11.5度くらいにしておかなければ、打ち出し角度が低くなり過ぎて安定して350ヤードを飛ばすインパクト条件にならないのである。

一方、米女子ツアーでは、8.5度とロフトの少ないドライバーを使うプレーヤーも少なくない。引退した元世界ランク1位のロレーナ・オチョアは、全盛期8.5度モデルを愛用していた。その理由はもちろんダスティン・ジョンソンと同じだ。効率よいインパクト条件を作るために、彼女はロフトの少ないモデルを選んだのだ。インパクトロフトを基準に考えれば、力があるから低ロフト、レディスだから大ロフトではないことがわかっていただけるのではないかと思う。

その上で、なぜ今、7番で25度などという設定のアイアンが生まれているのか? と考えてみる。
答えはシンプルだ。そうしておかないとイメージする7番アイアンの距離を出せない人がいるからである。簡単にいえばインパクトでロフトが寝てしまう人たちである。

ダスティン・ジョンソンは、アイアンショットでもロフトを立てて当てる。つまり、ノーマルロフトのアイアンでいいタイプだ。しかし、誰もがダスティン・ジョンソンのようなインパクトができるわけではない。

そこで、インパクトでのロフトの立ち加減によって、いくつかロフト設定の違うモデルを用意しておこう。それが各メーカーのやっている、現在の細かすぎるアイアンのバリエーション展開ではないかと思うのだ。昔はオリジナルロフトのダスティン・ジョンソン用アイアンしか売っていなかったが、いまは選べる時代なのだ。

画像: ハンドファーストでロフトを立ててインパクトするダスティン・ジョンソン(写真は2018年BS招待 写真/姉崎正)

ハンドファーストでロフトを立ててインパクトするダスティン・ジョンソン(写真は2018年BS招待 写真/姉崎正)

適正なインパクト条件を得るためのロフト設定ならば、いっそドライバーのように、同じアイアンヘッドで7番のロフトを33度、30度、27度と選べるようしておけばわかりやすいのでは? とも思ったが、これこそが「飛距離が足りなければ番手を上げればいい」というストロングロフト不要論になのだと思い、考えるのをやめた。

インパクトでロフトが立ちやすいスウィングには、それに合うヘッド重心設計が、ロフトが寝てしまうスウィングにはそれに適した重心設計があり、スウィングとヘッドの動きが合致して初めてスウィングが安定してくる。

たとえば、深重心のオフセットモデルで一生懸命インパクトロフトを立てようと思ってもうまくはいかないだろう。深重心モデルならばハンドファーストを強めようとせず、ウッドのように打っていったほうがはるかに安定して効率よく打てるのだ。

ただし、その場合、スウィングではインパクトロフトは立ってこないので、ロフトをあらかじめ立てておく必要がある。これが超ストロングロフトアイアンの生み出された背景なのではないかと、個人的には考える。

アイアンが飛ばない! と悩んでいるゴルファーに、どうしてわざわざ上がりにくそうな2番手もロフトが立ったアイアンを勧めるのか? それはおそらくインパクトでロフトが寝てしまっていることこそが、アイアンが飛ばない原因となっているからである。逆にいえば、超ストロングロフトアイアンでボールが上がりにくくなってしまうようなゴルファーは、もともと自分でインパクトロフトを立てられるタイプであり、アイアンの飛距離に悩んだりはしないと思われる。

本当は自分のスウィングでインパクトロフトを立ててくるのが理想だが、ゴルフとの向き合い方は人それぞれだ。適正インパクトロフトのことはクラブにお任せし、ラウンドを楽しむのもゴルフ人生である。

注)クラブにお任せしたのに、自分でもやろうとしてしまうことが最も危険であることを付け加えておきたい。

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