ある女性ゴルファーは「これ、気持ちいい!」と叫んだ
ゴルフクラブアナリストのマーク金井氏から「これ、打ってみて〜」と送られてきたのが、氏が開発したという『バンパードライバー』だ。ヘッドの上部の中寄りにシャフトが装着された実に特異な形状をしている。
シャフトは島田シャフト製のスチールシャフトで、長さは43.25インチだが総重量は350グラムをゆうに超えている。ダンロップの『ゼクシオ テン』は270g(※Rシャフト)なので、同じドライバーでも実に80グラムの差がある。
1996年にタイガー・ウッズがデビューした時、ドライバーのシャフトはスチールのダイナミックゴールドだった。20年以上前のその時でさえ、ドライバーにスチールを装着していたプロはほとんどいなかったとように記憶している。規格外のパワーを持つ当時のタイガーだからこそ、ドライバーにスチールシャフトが成立するので、他のゴルファーにはあまりにも重いと感じられた。
しかし、この『バンパードライバー』、妙に打ちやすいのだ。とにかくボールに当てやすく、結果が安定する。年配層から女性まで、筆者の周囲のゴルファーに数多く打たせてみたが、ほぼ全員が前に飛び、大半の人が一発目からナイスショットになった。ある女性ゴルファーは一発目を打った瞬間に、「これ、気持ちいい!」と思わず声をあげたのだ。
総重量350グラム以上というスペックだけを見れば、とても女性に扱えるクラブではない。このゴルファーは女性としては上級者だが、力がない女性や年配層でも何故か扱えてしまう。クラブ選びの常識に全く当てはまらない、実に不思議な試打結果となった。
野球のバットやテニスのラケットのように、持つところの延長線上に道具の重心がないのが、ゴルフクラブの特徴だ。スポーツに限らず、ハエたたきでも包丁でも何でも良いのだが、手に持つところの延長に叩く部分や刃先がないことを想像してみていただきたい。扱うのは非常に難しいのではないだろうか。
シャフトの軸線上にヘッドの重心がない。それをコントロールするのがゴルフスウィングの勘どころだ。ゴルフはクラブの重心をいかに上手く扱えるかを競っているようなところがある。
この『バンパースチール』は、シャフトの延長線上にとても近いところにヘッドの重心がある。その結果、扱いやすく、ヘッドの挙動も安定しているのが特徴だ。難しい話になるが、ヘッド重心がシャフト軸線上から遠くなると、スイング中のヘッドの動きは大きく複雑なものになる。
『バンパースチール』は残念ながら、ルールでは不適合。この形状になるとクラブはやさしくなることをルールを統括するR&Aも熟知しているのだろう。このクラブを打つと、現代の大型ヘッドのドライバーが抱える弱点も感じることが出来る。重心が遠くなればなるほど慣性モーメントが大きくなり、物理的にはやさしくなる半面、人間が扱う道具としては難しくなる側面もまたあるのだ。
このコラムは宣伝ではないので、買ってほしいとは言わないが、機会があれば、ぜひ打ってもらいたいと思う。変わった形状、超重量級と常識はずれのクラブでありながら、打てばゴルフクラブを扱うことの意味をなにか気づかせてくれるはずだ。