マキロイのセッティングで面白いのが、アイアンもウッドのシャフトもトルクを抑えてしならない、いわゆる「何もしないシャフト」であること。シャフトがなにもしないとなると、パワーを出すのも、コントロールをするのも自分の力でやらなければならないが、マキロイはそれができる選手だということだ。
ウッドは自身の飛距離を活かしてクラブの性能で方向性を維持しつつ、ボールコントロールは自分でやっているのだろう。またドライバーのウェートはヒール後方にしているが、これはややつかまり気味の設定で、ハイドロ―が自然とでるウェート位置。絶対に右に逃がさない。左よりも右のミスを嫌ったウェート位置で、きっちりクラブがつかまえてくれるように設定している。
3番ウッドを入れずに5番ウッドのロフトを立てて入れていることからも、「飛距離は自分で出す」という意図が感じられる。
5番ウッドの下には、2番アイアン「テーラーメイドP790UDI」を入れている。これは間違いなくアイアン好きのセッティングだ。もちろんキャリーはウッドには劣るので、パワーがないとできないセッティングだが、ライン出しをしたい場合や、重心距離がウッド系に比べてシャフト軸線に近いので操作しやすさいというメリットがある。やはり自分の得意分野の本数を厚くしているのが分かる。
3番、4番アイアンはキャビティの「テーラーメイドP750 ツアープロト」。ロフトが立っているアイアンは重心が低くないと球が上がらないため、キャビティアイアンを入れることで球の上がりやすさの恩恵を受けるためだと考えられる。5~9Iはマッスルバックの「テーラーメイドRORSプロト」。これは操作性重視のクラブ。
ウェッジの特徴としては、アイアンセットのピッチングを抜いて48度を入れていることが挙げられる。ウェッジ用の設計の立ったロフトはセットのピッチングと比べてスピンが入りやすく、重心が高くセッティングされている。
マキロイは48度のピッチングから60度のロブウェッジまで6度ピッチの3本体制だ。PGAツアーのシビアなコースセッティングで、沈んだ芝からボールを上げてピンに寄せるには60度が必要なのだ。
パターは「テーラーメイド スパイダーツアー」(スパイダーXの形状だがXの表記無しのためソールよりモデル名を判断)で重心角があって操作できるマレット。マレットタイプはオートマチックなものが多かったが、このスパイダーツアーは重心角が多く、ある程度は開閉しながら使えるので、マレットタイプの恩恵を受けながらもストロークに集中できる。
マキロイの傾向にも表れているが、道具のメリットもわかって使っているというように見える。タイプとしてはタイガー寄りの操作性のいいクラブでゴルフを覚えたギリギリ世代。テクニックを使いながら余計なことをしないセッティングなのがよくわかる。
【ローリー・マキロイの14本】
1W:テーラーメイド M5(8度、三菱ケミカルTENSEI CK ホワイト70、TX)
5W:テーラーメイド M5(17度、三菱ケミカルTENSEI CK プロホワイト80、TX)
2 I:テーラーメイド P790UDI(プロジェクトX HZRDUSブラック、6.5)
3~4 I:テーラーメイド P750ツアープロト(プロジェクトX、7.0)
5~9 I:テーラーメイド RORSプロト
48度:テーラーメイド ミルドグラインド(プロジェクトX、6.5)
54度・60度:テーラーメイド Hi-Toe
PT:テーラーメイド スパイダーTOUR
BALL:テーラーメイドTP5X
試合によってセッティングは変更される場合があります
解説/小倉勇人 撮影/姉崎正