フェースローテーションをほとんど使わないスウィング
2月の「WGCメキシコ選手権」を制し、海外メジャー今季初戦の「マスターズ」でも、優勝したタイガー・ウッズに1打差の2位タイ。今季も安定した成績で世界ランキングのトップに立つダスティン・ジョンソン。2016年の「全米オープン」以来となるメジャー2勝目へ向け、視界は良好だ。
昨季の「セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ」最終日に、433ヤードのパー4でわずか10センチに寄せるビッグドライブを披露するなど、圧倒的な飛距離を武器にする彼のスウィングの最大の特徴は、「テークバックを始動する際の予備動作である、“フォワードプレス”にある」とプロコーチの内藤雄士はいう。
「アドレスでは左腕とクラブが一直線で、地面と垂直に構えていますが、そこから手元をターゲット方向に押し込むフォワードプレスでハンドファーストの形を作ってからテークバックしていきます。インパクトの写真を見ると、フォワードプレスの形を再現するように、ハンドファーストにボールをとらえています。つまり、始動の前にあらかじめインパクトの形を作り、あとは手首や腕をほとんど使わず、体の回転だけで打っているのです」(内藤、以下同)
スウィング中のフェースの開閉を極力抑えることでインパクトが安定し、ターゲットをストレートに狙っていける。
「フォローでクラブが立ち始めてから、ようやく右手が左手を追い越していく。それだけ手や腕のローリングを使っていない証拠です。史上最強のボールストライカーと称された伝説的ゴルファー、モー・ノーマンのスウィングを彷彿させますね」
特筆すべきは、飛ばしの要素のひとつであるフェースローテーションをほとんど使わずに、これだけの飛距離を出せる点にある。
「たとえば、なにか重い物を持ち上げるとき、手や腕の力だけで上げようとしても無理ですよね。股関節を折って、身体を沈み込ませてから持ち上げることでパワーが生まれるわけです。ダスティン・ジョンソンの飛ばしのパワーも、この股関節の動きによって生まれています。
手は使わず、胸椎の回旋と股関節の動きでバックスウィング。トップで右腰は高い位置にありますが、切り返しからダウンスウィングでは、股関節を深く折り込みながら、低く沈み込んでいきます。ダウンで深く折り込んだ股関節をインパクトに向かって伸ばしていく。この股関節の折り込みと伸ばしで飛ばしているんです。あくまでも推測ですが、彼のなかではインパクトまでの動きでスウィングは完了していて、そこから先のフォローやフィニッシュは惰性でしかないのだと思います」
今年6月で35歳になるダスティン・ジョンソンだが、「体への負担も少なく、進化した現代のギアともマッチしたスウィング。この先、年齢を重ねても、飛距離、成績ともに高いレベルを保てるので、彼の時代がしばらくは続くのではないでしょうか」と内藤。
全米プロももう間近。メジャー2勝目はなるか、要注目だ。