もっと飛ばしたい!けどおもいっきり振ると曲がってしまうというアマチュアゴルファー少なくない。プロゴルファー・増田哲仁は打ったボールの滞空時間を想像するという。自身の著書「これでいいの?これだけで飛ぶの?」から飛距離アップのドリルを紹介。

飛ばそうと思うほど、体は早くボールに当てたがる

ドライバーを思いきり振って、飛んで曲がらない球を打つ。多くのアマチュアの憧れです。ゴルフにおいて飛距離は、とても魅力的な要素で、ドライバーというクラブがあるからこそ、ゴルフをしているという人も大勢いることでしょう。

しかし、そのためには、力いっぱい思いきり振ろうとか、強くボールを叩こうとかいう「飛ばし屋」としての意識よりも、「時間の感覚」を養って欲しい のです。「飛ばそうと思えば思うほど、人の体は一刻も早くボールをヘッドに当てたがります。

ということは、始動からトップまで、さらにはトップからインパクトまでの時間が短くなりがちなのです。もしかすると、頭の回転が速い頭脳明晰な人ほど、要領よくヘッドを最短時間でボールに当てたがってしまう傾向があるかもしれません。

打ったボールの滞空時間を想像する

そういう人は、試しにこんなことをイメージしてみてください。近くのゴミ箱にモノを投げ入れるのがアプローチなら、ドライバーショットは、外野からホームベースにバックホームする遠投のイメージです。

「ポイ」と投げるわけにはいかず、 振りかぶって体全体を使って時間をかけて「そりゃ~っ」と投げますよね。時間が短いと大きなエネ ルギーが生まれませんから、当然ボールを遠くへ飛ばすことなどできません。

画像: 野球の遠投のように体をゆっくり大きく使う。これが飛距離につながる体の使い方だ

野球の遠投のように体をゆっくり大きく使う。これが飛距離につながる体の使い方だ

ボールを前にすると、どうしてもゆっくり振れず、急いで強く叩いてしまうがいます。そういう人はスウィングのことばかり考えがちで、ボールが飛んでいく時間というものが頭から抜けてしまっているのでしょう。

考えてみてください、ゴミ箱への「ポイ」であれば1秒以内ですが、「そりゃ~っ」の遠投は、たとえば200ヤード地点に落ちるまでには、4~5秒はかかりますよね。打つ前にボールを見たとき、その4~5秒という時間をイメ ージできれば、かなりスウィングはゆっくりになるはずです。

スウィングの時間をゆっくりにするには、ボールの滞空時間を想像するといいでしょう。

それがなかなかできない人は、ティアップしたボールを、サンドウェッジでフルショットして、フィニッシュのままの姿勢で落下するまで見続けてくださ い。その直後にドライバーを打ってみます。

これを交互に繰り返すと、滞空時間が体にしみこんで、スウィングがゆっくりになります。

ゆっくりギアチェンジしてエネルギーを伝える

スウィングに時間をかけているのに飛ばないという人は、「飛ばしたい」という意識が強すぎるのです。ドライバーは、「飛ばしたい」と思えば思うほど、逆に飛ばないクラブでもあるのです。

重いクラブなら、体全体を使わなければ飛びません。ハンマーは重いからこそ、手や腕だけでは飛ばせないわけです。

しかし、ドライバーは軽いクラブですから、手や腕だけで思いきり振れてしまいます。しかも、最近はクラブ重量がどんどん減っていますから、なおさらです。

でも実はそこが落とし穴。腕や手で強引にダウンスウィングしてしまうと、急いでギアチェンジをしているようなスウィングになってしまいます。力が伝わりきらないうちに次々シフトアップされ、パワーロスにつながります。

多くのアマチュアのスウィングは、1速、2速ときて、いきなり5速、6速に入ってしまうような感じです。

しかし、まずは飛ばす必要などないと思ってください。ドライバーなら、意識せずとも勝手に飛んでいってくれます。飛ぶように設計されたティショット専用クラブが、ドライバーなのです。

1速から6速まで、オートマチック車のように自然に加速して、ヘッドがボールに当たるまでの時間を有効に利用します。エネルギーをフル活用すれば、 大きな飛距離が生まれますし、ミスも激減するはずです。

上手く加速させるためには、先ほどの外野からの遠投を思い出してください。 足を踏み出す前に、いきなり腕を振る人なんていませんよね。まずは、大きく足を踏み込んで、腰を入れて、肩をまわして、腕を振って、指先を切って、ボールを離します。ドライバーも同じです。足、腰、肩、腕、手、グリップ、シャフト、ヘッドの順番で、ゆっくり、大きく体を使って、力を伝えていく感覚が欲しいのです。

エネルギーの伝え方の順序も大切です。足も腰も肩もなく、いきなり腕、手、ヘッドという伝え方で飛ばそうとしている人が多い。それでは小さな筋肉しか利用していないので、小さなパワーしか生まれません。また、手で小細工しすぎるスウィングは、ミスも多いのです。

それよりも、下半身から始動していき、最後にヘッドにたどりつくスウィングをすれば、必然的に大きなパワーが生まれます。1速、2速という、最も力が必要な時点で大きな筋肉を利用するわけです。非力な女子プロがビッグドライブできるのも、ゆっくりしたスウィングで、エネルギーを下半身から上手く伝えきっているからです。

「ポーン」という感覚で球を打つ

足から徐々にエネルギーを伝え、ゆっくり大きなスウィングを作るためには、フェアウェイウッドで50ヤードのアプローチをしてみるといいでしょう。飛ばそうとしなくても、あっという間に飛んでいってしまうのがわかります。50ヤード飛ばす体と時間の使い方がわかれば、次は100ヤード、そして200ヤードと距離を伸ばしていく。

画像: フェアウェイウッドで50 ヤードのアプローチを打ち、ゆっくりスウィングを作る。飛ぶクラブでも飛ばさないようにタイミングを作ることがポイント。体を使ってゆっくりと振るしかないから、スウィングの時間感覚も体得できる。

フェアウェイウッドで50 ヤードのアプローチを打ち、ゆっくりスウィングを作る。飛ぶクラブでも飛ばさないようにタイミングを作ることがポイント。体を使ってゆっくりと振るしかないから、スウィングの時間感覚も体得できる。

すると、遠くへ飛ばすごとに、体はゆっくり、大きく、動かせるようになってきます。つまり、まずは50ヤードで、クラブの性能、飛ばそうと思わなくても飛んでいくということを実感するわけです。その後、200ヤード飛ばすためには、足、腰、肩も使わなければならないということに気づけばいい。

フェアウェイウッドでのアプローチは、小手先のスウィングでは上手くいきません。小手先で振ると、ボールへのミートと距離のコントロールが難しくなります。足、腰、肩はもちろんですが、しっかり背筋まで使って、しかもダウンスウィングをかなりゆっくりにしなければ、ミスショットになります。体の使い方とエネルギーの伝え方、そして時間の感覚まで磨けるドリルです。「パチン」ではなく、「ポーン」という感覚で打ってみましょう。

「これでいいの?これだけで飛ぶの?」(ゴルフダイジェスト新書)より

撮影/小林司

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