地面にかかる見えない力を可視化する最新の計測器(3Dモーションプレート)の「スウィングカタリスト」。その専門家によれば、解析によってスウィングタイプは力の出し方によって3タイプあるということがわかってきたという。全国から集まったインストラクターを対象としたセミナーを取材した。

3Dモーションプレート「スウィングカタリスト」は足元に敷くマット状の器具で、左右の足裏の体重のかかり具合から、横方向へ移動する力、回転力、地面反力の3つの力がスウィング中にどう変化するかを可視化することができる。

画像: あなたはJ・ローズ(左)、M・クーチャー(中)、J・トーマス(右)どのタイプ?

あなたはJ・ローズ(左)、M・クーチャー(中)、J・トーマス(右)どのタイプ?

もとはスキージャンプ競技の“踏み切り”を計測するために開発されたものだというが、近年はゴルフへの利用が進み、それによってスウィングの解明に大きく役立っているという。

このような最新機器が海外で登場すると、インストラクターやプロ向けに日本でセミナーが開催される場合が稀にある。情報感度の高い教え手ほどこのようなセミナーがあると聞きつけて参加し、世界の最新理論を自分のレッスンに取り入れる傾向があるようだ。

画像: スウィングカタリストのデータ画面。スウィングの動画と足裏の荷重、水平方向、回転力、地面反力が可視化されて表示される

スウィングカタリストのデータ画面。スウィングの動画と足裏の荷重、水平方向、回転力、地面反力が可視化されて表示される

話が逸れたが、今回日本で開催されたセミナーのインストラクター役を務めた、スウェーデンで10校、アジアなどで3校を開校しているというスウィングカタリストのアンバサダー、エリック・ブロムクイストはこう語る。

「スウィングは十人十色、身長や腕の長さ、可動域などが大きく影響します。だから誰かと比較することはナンセンス。そして、体重のかかり具合や地面に対する体重のかけ方は、見た目とは違うことが多く計測してみないことには分からないのです」(ブロムクイスト)

画像: 横方向の力を使う大きさの強い代表選手はジャスティン・ローズ(写真は2018年の全米オープン 撮影/服部謙二郎)

横方向の力を使う大きさの強い代表選手はジャスティン・ローズ(写真は2018年の全米オープン 撮影/服部謙二郎)

つまり、「たった一つの正解」は存在しないということ。横方向の力、回転する力、縦方向の力(地面反力)のそれぞれの大きさ、そしてその配分は人によって異なり、また人によって異なって問題ないというわけだ。

ただ、どの力を使うかによってゴルファーは大きく3つにタイプ分けすることは可能。そして、それぞれのタイプに、世界を代表するプレーヤーが存在するという。

「ターゲット方向にシフトする横方向の力を使う大きさの強い選手の代表はジャスティン・ローズ。回転系の代表はマット・クーチャー、地面反力を使う代表がジャスティン・トーマスです」(ブロムクイスト)

画像: 回転系の代表選手はマット・ク―チャー(写真は2019年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

回転系の代表選手はマット・ク―チャー(写真は2019年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

ちなみに、トーマスが地面反力を多く使うからといって、横方向への移動や回転の動きを使わないわけでは当然ない。あくまでも、割合が多いということだ。これを前提に、ブロムクイストは面白いことを教えてくれた。

「横方向への移動、回転、縦方向の地面反力。この三つの見えない力のどれを使って打っているのかは体型や可動域の大きさ、筋肉量やその強さ、スポーツ歴など人それぞれ異なります。ただ、どの力を使って打つ割合が高いかで推奨するグリップの握り方は変わってきます」(ブロムクイスト)

画像: 地面反力を使う代表選手はジャスティン・トーマス(写真は2019年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

地面反力を使う代表選手はジャスティン・トーマス(写真は2019年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

ローズに代表される横移動タイプは、少ないフェースローテーションで振りたいため、ストロンググリップがマッチ。適度なフェースローテーションを行いたいクーチャーのような回転タイプはスクェアグリップ。地面反力を大きく使うジャスティン・トーマス的なタイプは伸び上がる分クラブのトウダウン量が多くなり、フェースが返りやすくなるので少しウィークグリップがマッチするという。

このあたり、自分のタイプがどれかを自己診断して、その上で自分に合うグリップを試してみるといつもと違う結果が出るかもしれない。

セミナーでは実際に身長や腕の長さ、そしてもちろんスウィングを計測しながらのライブレッスンが行われた。モデルとなったプロテストチャレンジ中の女子選手は横、回転、縦の力の出し方がいずれもスムーズではなかったが、力を出せる体の使い方に修正を加えた結果、7番アイアンのヘッドスピードが3m/s上がり飛距離も約10ヤード伸びていた。数値で見ると、縦方向の力がより多く使えるようになったことで、短時間での飛距離アップが実現したようだ。

画像: ライブレッスンでは力の出し方を左の画像から右の画像へと修正。5分ほどでヘッドスピードが上がり飛距離も伸びた

ライブレッスンでは力の出し方を左の画像から右の画像へと修正。5分ほどでヘッドスピードが上がり飛距離も伸びた

レッスンを受けた本人も、「体への負担が少なくなり、それでもスピードが上がり効率性が上がった」とコメントしていた。

ゴルフレッスンの最先端の現場は、テクノロジーの進化により、感覚的なレッスンから科学的データに基づくものへと変化しつつある。日本でもこれらのテクノロジーを使いこなし実際のレッスンに取り入れてゴルフをやさしくしてくれるインストラクターが、今後ますます増えそう。一般ゴルファーにとっても、それは朗報と言えるはずだ。

取材協力/エースゴルフクラブ赤坂、エンジョイゴルフ&スポーツ、balancegolf、スウィングカタリスト

 

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