歴代王者の一人として「ニクラスの大会」に挑む
アメリカでは5月の最終月曜日は「戦没将兵追悼記念日(メモリアルデー)」。メモリアルトーナメントには、戦没者を追悼するという意味と、ゴルフの歴史上の偉人たちを讃えるという意味でのメモリアル、ふたつの意味がかかっているそうです。
コースを歩いていると、そんなゴルフの偉人たちを顕彰する銅板を見つけました。マスターズの創始者でもある球聖ボビー・ジョーンズ。そしてこの試合の創始者である帝王ジャック・ニクラス……この場所にいると、自分がゴルフの歴史の一部になったような感慨が湧いてきます。
そんな歴史的大会の会場には、我らが松山英樹選手のパネルも設置されています。メディアセンターには写真も飾られ、そこには「大会史上最年少優勝者」の言葉が添えられていました。松山選手がこの試合を制したのは5年前。まだ22歳の頃でした。
私は、松山選手が勝ったコースにはすべて足を運んでいますが、今週の舞台であるミュアフィールドビレッジGCも、ハザードがグリーン周りにかかっていたり、バンカーもラフも深く、ティショットも絞ってある戦略的なコース。松山選手が勝つのも納得の、戦略性の高いコースでした。
その松山選手ですが、この日は昼ごろコースに現れ、練習とハーフの練習ラウンドをこなしました。直接見たのは4月のマスターズ以来ですが、そのときに比べてかなり調子が上がっていると感じました。
マスターズはティショットを右にフカし、それを嫌って今度は左へ曲げるという姿が見られましたが、かなりボールがつかまるようになっています。
過去に私が見た中では、2017年にWGCブリヂストン招待を勝ったときは「この人は真っすぐにしか球が飛ばないのか!?」と驚かされましたが、そのときの調子が100とすれば、今の調子は70、それもまだまだ高まる途中の70という印象を受けます。
また、パッティングも大きく変わっています。スタンスを狭くしているのは映像を観て知っていましたが、打ち方自体が私には別人に見えました。
今までは、両肩、両ひじ、手元をそれぞれ頂点とする五角形のイメージで、軌道はフェースを開閉しない直線型ストロークでしたが、腕を真っすぐ伸ばした三角形に腕のカタチが変化し、体の回転でイン・トゥ・インに振る振り子型ストロークに変化していました。
ティーチング的に見ると、スタンスを狭くしただけではない大きな変化に見えますが、ストロークはスムーズで、好印象です。実際、この日の練習ラウンドでも3〜5メートルくらいのパットがよく入っていて、12番からは3連続バーディを奪っていました。
ショットの調子も良く、パットも噛み合ってくれば、当たり前のように上位進出できるのが松山選手。活躍に期待しつつ、明日以降も取材したいと思います。