話題のタイトリストTS1。ヘッドを活かす最適な重さが超軽量だった
6月5日の情報解禁と同時に多くのインフルエンサーたちが、“飛ぶ!”、“振りやすい!”、“パワフル!”と口を揃えているのが、タイトリストのニューモデル TS1ドライバー(7月5日発売)だ。
これはすでに発売され、世界のツアーで高い使用率を誇っている、TS2、TS3ドライバーのファミリーとして誕生した新しい飛びの提案モデルだ。開発コンセプトは、TSドライバーの売りである高慣性モーメントヘッドによるスピード性能と直進性を、すべてのゴルファーへ広げていくことだという。
TS2、TS3は慣性モーメントを高めることで大きなエネルギーを生み出し、許容性を高めながらボールスピードを最大化させることに成功しているドライバーだが、高慣性モーメント化の特性として、ヘッド重量が重くなりがちで、人によっては振りにくさを感じる仕上がりになってしまう傾向があった。
トッププレーヤーにはぴったりだが、一般ゴルファーにとってはややハード、という感じだろうか。これはTS2、TS3だけではなく、同じように高慣性モーメントを狙っている米国ブランドのすべてが抱えているジレンマだといえるだろう。
そこでタイトリストの開発陣は、高慣性モーメントヘッドコンセプトをキープしながら、誰もが振りやすいと感じるニューモデルの開発に乗り出したのだという。それがTS1ドライバーだ。
「TS1の慣性モーメントは、TS3を上回る非常に大きなものですが、クラブ全体が超軽量でとても振りやすく、効率よくクラブスピードをアップできる仕様になっています。これによって、従来の高慣性モーメントヘッドでは重たくて振りにくいと感じていた一般のゴルファーにも、プロが放っているような高慣性モーメントヘッド特有のパワフル弾道を実感していただけるようになったのです」(タイトリスト ゴルフクラブ マーケティング最高責任者 ジョッシュ・タルギ氏)
クラブ総重量 275グラム(Titleist Diamana 50/S)というのが、TS1ドライバーの基準スペックだが、確かにこれは軽い。日本ではシニア向けと言われてしまうほどの軽さだ。
「たしかに重さだけを聞くとそう思う方がいるかもしれませんが、我々の狙いはまったく違うのです。すべては高慣性モーメントヘッドのパワーを存分に活かすため。その方法を考えていったら結果的にこの重さになったのです」(タルギ氏)
軽・硬シャフトができるようになったからこそ、超軽量ドライバーは、みんなのスピードスペックになった
ゴルファーの中には、経験の中で培ってきたクラブに対するイメージがある。硬いシャフトは“ハードでヘッドスピードが速い人向け”というのもその一つである。これまでの硬いシャフトは製法上重たくならざるを得なかったため、こうしたイメージが定着したのだが、現在の技術では50グラム台としても従来の70グラム級と同じ水準まで硬くできるようになっている。
この逆に、超軽量シャフトはブニャブニャして振りにくいという過去の常識があり、これが超軽量ドライバーは、シニア向けというイメージを作り上げてきたわけだ。
しかし、TS1ドライバーを実際に振ってみても、決してシャフトがブニャブニャしている感じがしないのが特徴だ。振っている感じは、これまでの総重量290グラム台ドライバーを思わせる。とくに手元部にしっかり感があるのが印象的だった(筆者の個人的感想)。
よく考えてみれば、今は米男子ツアーのトップアスリートが60グラム台前半のシャフトを使う時代である。これこそが軽くても、硬さを調整すればヘッドスピードが速くても問題なく使うことができることを示している。また、高慣性モーメントの重ヘッドドライバーが主流となって久しい米国で、こうしたドライバーの軽量化がいち早く進んできたのにも、そうしなければならない理由があるのだろうと思う。
シャフト製造技術の進化とともに、クラブの重さと対象ヘッドスピードの概念は様変わりしている。そして、それはヘッドの慣性モーメントアップとも密接にリンクしているものだ。小さいヘッドで飛ばすことを考えていた時代とは、スペックに対する概念が違うのだ。
はっきり言えば、現在のゴルフ界には慣性モーメントの大きいドライバーしか存在していない。そのドライバーをうまく使いこなし、味方につけて結果を出すための方法論の一つが、クラブ全体の軽量化ということになるのではないだろうか。TS1ドライバーがその新しい扉を開くことになるのか、大いに注目したい。