「1人1袋」を当たり前の時代にしよう
池のボールを拾う竿は一組に一本ですみますが、目土袋は一つでは足りません。なのにほとんどのコースが人数分の目土袋を備えません。
しかし、一人一袋の朗報が各地から聞こえてきました。ディボット跡は自分で始末するのが当たり前と、マイ目土袋を持つ上質ゴルファーが各地で増殖中です。
淡路島・洲本GCや千刈CC。とりわけ千刈の有志の会の特製袋は評判となり、神戸GCの有志たちがまず百個、名神竜王GCで三百個、さらには宝塚GCでも..…と動きが広がっているそうです。
茨木CCの青草会は八十人ほどの会ですが、姉妹コースの霞ヶ関CCの青草会とともに目土袋を常用しているとか。それを見て、茨木の中のほかの会も遅れてはならじと次々に目土袋の注文をマスター室に頼んでいるとか。宮城の花の杜GCでは月例出場者たちが率先して目土袋を手に下げ、コースをきれいにしているとか。
時折、ターフが埋め戻されているのを見かけます。戻した人の気持ちが見えて嬉しくなります。が、せっかくですがターフは乾いて枯れてゴミになります。やはり砂で保湿してあげないといけません。
ところで、本場スコットランドではどうされているのでしょう。あちらに長くいた友人は「目土袋は見たことないです。根が横に伸びない芝だからターフがきれいに取れます。それを元に戻すことだけがマナーでした」と言います。 私の旅の経験でも同感です。スコットランドでもアイルランドでも砂を持つプレーヤーもキャディもいませんでした。観光客の多いオールドコースはディボット跡が目にあまり、呆れて写真に撮ってきました。芝が薄いとはいえボール半分が沈む深さでした。
アイルランドのラヒンチとトゥラリーでは、六、七人の作業員がバケツを抱えて並び、手で砂を握って落とし、足でならしている風景に出会いました。目土袋を下げたプレーヤーは見たことがありません。これがリンクスでの流儀なのでしようか。
お国柄と言ってしまえばそれまでです。しかし、本場のゴルファーたちが、総本山のゴルファーたちが、「コースの保護」ショット跡の修復をプレーヤー自身はやらず、人まかせとは、どういうことでしょう。
英国南部地区では「ディボット・ツリー」なるものが数年前から流布しています。数十個の薄い砂袋がつり下げられたもので、プレーヤーはそれを借りて使います。狭い口から砂を注ぎ込むスタイルです。
米国本土やハワイでの乗用カートにはサンドポットが備えられていますが、腕力の弱い私たちには重くて扱い難いものです。オーストラリアでは小型のバケツからダイレクトに注ぎ込むスタイルです。 スコップで量を加減して砂を遣る日本流は世界に誇れる美風ではないかと思います。
「脱俗のゴルフ 続・ゴルファーのスピリット」(ゴルフダイジェスト新書)より
撮影/渡部義一