松山、タイガー、レクシー……名手たちの“キラーショット”
全米オープン初日、松山英樹はこの日14番パー5で残り35ヤードを直接カップに沈めチップインイーグルを奪った。これが彼にとってのショット・オブ・ザ・デイ。
タイガーは同じ14番で決めた9メートルのパーセービングパットがこの日のキラーショット(パット)。第2打がグリーン手前のバンカーにつかまり、そこから珍しくホームランしグリーンを大きくオーバーし、もじゃもじゃのラフに捕まった。案の定アプローチも寄らず9メートルのパットを残すピンチに陥った。
絶体絶命。だがそこはタイガー。9メートルをねじ込みパーをセーブし大会初日にして小さなガッツ
ポーズを繰り出した。
そのタイガーは続く15番パー4で残り151ヤードの第2打をピッチングウェッジでグリーンに乗せたものの15メートルのパットを残し2パットのパーに終わっている。
タイガーのピッチングウェッジのショットを見て思い出したのが前週米女子ツアーのショップライトクラシックで優勝を飾ったレクシー・トンプソンの1打だ。
サンデーバック9の17番までイ・ジョンウン6にリードを許していたが最終18番でイーグルを奪い
逆転優勝を飾ったのだが、そのイーグルの内容が凄かった。
飛ばし屋レクシーがパー5で2オンを狙うのは当然だが、ティショットはピンまでおよそ190ヤード地点の深いラフへ。逡巡した彼女がバッグから抜いたクラブはなんと、ピッチングウェッジ!
「普段は135ヤードを打つクラブです」というレクシーがなぜ残り190ヤードをピッチングで狙おうと思ったのか?
「フライヤーしそうなライだったのと風が強いフォローだったからです。135ヤードキャリーして50ヤード転がってくれ! と祈るような気持ちでした」それにしてもこの場面でピッチングを持てる勇気に感服だ。
そして放った第2打は作戦通りグリーンを駆け上がりピンまで6メートルのイーグルチャンスに。「それを決めて逆転優勝。その瞬間は全身鳥肌が立ちました。重圧のなか最高のショットが打てた」と笑顔が弾けたレクシー。
たった1打が試合を決めるキラーショットになる。わずか1打が明暗を分けるのがゴルフというゲームの残酷さだ。いざというとき決める力とはいったい何なのか? ゴルフの神様の采配と運、そしてなによりいかに普段から鍛錬を重ねるかが鍵になる。