日本プロで復活優勝を果たした石川遼。4日間の平均飛距離は315ヤードと、飛距離も十分に出ていた。スウィング改造を果たし、腰痛に悩まされながらもつかんだ勝利。その勝利を支えたスウィングを、プロゴルファー・中村修が解説。

「手元の浮き」を克服

石川遼選手は、長く「手元の浮き」を自分の悪いクセと考え、それを克服するための努力を続けていました。

手元が浮くと、クラブはトウダウンという現象が起こり、フェースが急激に返りやすくなってしまいます。昨年の開幕戦ではクラブを極端にフラットに下ろすような動きを取り入れ、今回の日本プロではこれまた極端に振り遅れるような素振りを繰り返していましたが、それらはすべて、手元を浮かさず、インサイドからクラブを寝かせて下ろすための工夫です。

画像: クラブを寝かせて意識的に“振り遅れ”状態を作るドリルを繰り返していた(写真はダンロップ・スリクソン福島オープン)

クラブを寝かせて意識的に“振り遅れ”状態を作るドリルを繰り返していた(写真はダンロップ・スリクソン福島オープン)

周りからは悪くいえば迷走ともとらえられかねない試行錯誤の連続。それでも本人の中では目指すべきスウィングの方向性がしっかりと見えていたのでしょう。

体重移動と積極的なフェースターンで飛ばすスウィングから、クラブが自然にターンする動きに従う、クラブの特性を生かしたスウィングへ。その長く苦しいスウィング改造の結果が、ついに出たのが今回の日本プロだったと言えます。

画像: インパクトでの手元の浮きが見られなくなり、インパクトが安定した(写真はダンロップ・スリクソン福島オープン)

インパクトでの手元の浮きが見られなくなり、インパクトが安定した(写真はダンロップ・スリクソン福島オープン)

「今は95%くらいで打って295Y飛ばすというよりも、まず、85%で打って285Yの精度をどれだけ上げられるかが大事だと思います」石川選手がそう語っていたのは2017年末ですが、日本プロの4日間での平均飛距離は315ヤードで、全体の2位。そして、10代の頃の彼のように“マン振り”している様子は見られません。

関係者の話では、トレーニングにかなりハードに取り組んでいるのだそうです。トレーニングを苦手としていた天才肌の石川選手が、腰痛を抱え、今年プロ人生初の棄権を経験したことでトレーニングへの意識が変化し、実際に目で見てわかるレベルで体が大きくなっていました。

画像: 右手首の角度がキープされ、フェースのターンをおさえることで正確に飛ばしている。それでいて飛距離も出ているのはトレーニンングの成果だ

右手首の角度がキープされ、フェースのターンをおさえることで正確に飛ばしている。それでいて飛距離も出ているのはトレーニンングの成果だ

正面からのインパクトを見ても、インパクト直後でも右手首の角度がキープされ、手元のターンが抑えられているのがわかります。クラブのリリースを遅らせて、コントロールを重視しながら315ヤードを平均で飛ばせるのは、今の石川遼選手の明確な強みと言えるでしょう。

手が浮くクセ。腰痛。それらがもたらしたドライバーの不調に端を発する長いトンネル。そのトンネルを、時に道に迷いながらも手探りで進み、ついには出口にまでたどり着いたことに、心から拍手を送りたいと思います。とはいえ、まだ1勝。今シーズンこれから何勝してくれるのか、石川遼の“これから”を何より楽しみにしたいと思います。

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