悪天候のため初日が中止となり、最終日に全選手が36ホールをプレーした今年の日本プロ。12年ぶりとなったその状況を制したのは、12年前に勝ったのと同じ選手だった。12年前のあの日、今年の昨日、そのどちらもでシャッターを切ったカメラマン・姉崎正が現地レポート。

7月7日七夕。朝日が眩しい午前6時がトップスタート。最終組の石川遼、ハン・ジュンゴン、北村晃一は午前8時。この間10分間隔で、13組がスタートしていきます。

第3ラウンドでは上がり3連続バーディ等もあり、時松隆光がリード。ハン、松原大輔、星野陸也、ショーン・ノリスが追う展開で、石川遼は2連続ダボもあり、優勝戦線から脱落の様相です。このときまでの下馬評では、ノリスとハンが優勢でしたが、私はスコア通り時松優勢と見ていました。石川は厳しいかな、とも。

画像: 上がり3連続バーディを奪い、第3ラウンドを終えて13アンダーでトップに立った時松隆光

上がり3連続バーディを奪い、第3ラウンドを終えて13アンダーでトップに立った時松隆光

第4ラウンド後半に入ると、星野がハンに追いつきました。時松は第3ラウンドの勢いがありません。ノリスもティショットが不安定です。

ハンと星野の争いかな。ですが、16番リーダーズボードを見ると、星野があれっ、ふたつも落としてる。そして石川がジワリ伸ばしています。星野と共に18番グリーンに向かおうと考え、18番セカンド撮りますが、星野はない! と判断。急ぎ17番パー3に戻ります。石川はグリーンオン。一方のハンは、キャリーでグリーンに届くものの、ボールは傾斜に逆らえず池ポチャ。

画像: 最終ラウンドの17番で、ハン・ジュンゴンがまさかの池ポチャ。ダブルボギーとし、石川と並んだ

最終ラウンドの17番で、ハン・ジュンゴンがまさかの池ポチャ。ダブルボギーとし、石川と並んだ

風雲急を告げ、ここで一気に石川の優勝の芽が出てきました。しかし、石川のバーディパットが外れこのホールはパー。追い付くことはできません。そしてハンのボギーパットが……外れた! ここにきてのダブルボギーで、ついに並んだ。ギャラリーもザワつき出してます。

追いつく者と逃げる者。同じスコアでもその差は歴然です。しかし石川はここ3年ツアーで勝っていません。それがどう出るか……。72ホール目の最終ホールをともにバーディで締めくくり、戦いはプレーオフへともつれ込みます。ただ、この段階で追いついた者のアドバンテージは薄らいだように感じました。

画像: 一時は開催も危ぶまれた今年の日本プロ。練習日には見えなかった開聞岳が、最終日にはよく見えた

一時は開催も危ぶまれた今年の日本プロ。練習日には見えなかった開聞岳が、最終日にはよく見えた

72ホール目と同じ18番パー5で行われたプレーオフ1ホール目。石川のティショットはハンより40〜50ヤード飛んでいます。どうやらカート道で跳ねた模様。「残り距離188ヤード」とTV局のスタッフが無線で知らせています。

先に打ったハンのセカンドショットはグリーンをとらえ、歓声が聞こえます。次いで石川も打つと、スタンドからさらに大きな歓声が聞こえます。だいぶ近くに乗った様子。

ハンの長いイーグルパットは惜しくも外れ、石川が狙います。ここにいる全員が固唾を飲んで見守っています。カップ迄は4メートル強でスライスライン。「自信を持って打った」というパットが決まります。

画像: プレーオフ1ホール目、4メートルのウイニングパットを決め、全身で喜びを表現した

プレーオフ1ホール目、4メートルのウイニングパットを決め、全身で喜びを表現した

感極まった石川が雄叫びをあげ、ギャラリーは大喝采。カメラマンは無心にシャッターを切り、ここに集ったすべての人々のすべての視線は石川に注がれています。今年のマスターズ、タイガーの復活優勝を撮影していたときのことが自然と思い出されます。

画像: ガッツポーズの瞬間、カメラマンには石川とマスターズで復活したタイガーの姿がダブッて見えた

ガッツポーズの瞬間、カメラマンには石川とマスターズで復活したタイガーの姿がダブッて見えた

視線の先にはエベレストがあると19年日本プロのチャンピオンは語りました。そこを制覇するためには、いろんな山を登らなければならないのだと。石川の語ったエベレストとは再びマスターズで戦うことでしょうか。まだ日本人が成し遂げていない4大メジャー優勝のことでしょうか。

開聞岳の裾野に広がるコースで勝ち、石川の世界の高みを目指す戦いが再始動しました。

撮影/姉崎正

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