PGAツアー「3Mオープン」で同時期にプロ転向したマシュー・ウルフと最後まで優勝争いを繰り広げた日系アメリカ人のコリン・モリカワ。ツアー取材歴20年のゴルフエディター・大泉英子が、その横顔に迫る。

コリン少年は、父が並べたゴルフボール10球を何のためらいもなく見事に全てヒット。息子の才能を見抜き、8歳でゴルフのプライベートレッスンを受けさせることにした。そしてコーチについたのが、08年南カリフォルニアでティーチャー・オブ・ザ・イヤーを獲得したリック・セシングハウス。今もモリカワの技術面と精神面を支えている。

モリカワは「静かなる暗殺者」という異名をとるほど物静かで冷静だが、プレッシャーのかかる場面でも冷静に立ち振舞えるメンタリティは、本来持ち合わせていた精神面の強さと心理学者でもあるセシングハウスによるところが大きいようだ。

画像: 3Mオープンで2位と好成績を残しているコリン・モリカワ。1997年生まれ、22歳のアメリカ人だ(写真/Getty Images)

3Mオープンで2位と好成績を残しているコリン・モリカワ。1997年生まれ、22歳のアメリカ人だ(写真/Getty Images)

「昔から彼は、いつも静かなる自信をもっていた。自惚れなどではなく、自分の才能を信じ、仮に悪いプレーをした時でも自信を持ち続けているような子供だった」

モリカワは大好きなゴルフを夢中になってやっていたが、一方で野球やバスケットボールもこなすスポーツ少年だった。ロサンゼルスっ子らしく、レイカースとドジャーズの大ファン。だが12歳の時には「他のスポーツを止めて、ゴルフをやる!」と決心。

両親のサポートもあり、ゴルフの練習や遠征に勤しんだが、全米最古のジュニアトーナメントの一つ、ウェスタンジュニアで優勝すると、本人のゴルフ観が変わり、徐々に名前が知られるようになった。

のちにカリフォルニア大学バークレー校・ゴルフ部に所属。Pac-12選手権などのアマチュア大会で11勝し、ウォーカーカップ、アーノルド・パーマーカップ、アイゼンハワートロフィなどの団体戦にメンバー入りしてチーム優勝にも大いに貢献した。

オールアメリカンに選ばれること4回。19歳の時にはウェブ・ドット・コムツアー(現コーンフェリーツアー)の試合で優勝争いを演じたこともあった。JJスポーン、オリー・シュナイダージャンズとプレーオフの末、敗退したが、この時もし優勝していれば、彼のプロ入りも早まったかもしれない。だが、そのままアマチュアのステイタスを維持し、2018年には3週間、世界ゴルフアマチュアランクで1位の座についたこともあった。

「僕は多くの学生たちのように5年もいるつもりはありませんでした。4年でしっかり勉強し、経営学の学位を取得するつもりだったんです。カリフォルニア大学でプレーしながらたくさんのことを学び、たくさんの人たちと出会いました。友達やサポートしてくれるグループなど、これから一生付き合うことになる人たちばかりですよ」

モリカワは大学時代、様々な経験を重ね、もうツアーに出ても大丈夫だと思ったところで、プロ転向したのだそうだ。

プロ転向後は、全米オープンの予選会に出場し見事通過。その直後に推薦をもらっていたRBCカナディアンオープンで14位に入る健闘を見せ、翌週の全米オープンではプロ入り後初メジャーで35位に。

スポンサー推薦で出場した次週のトラベラーズ選手権では36位に入り、3Mオープンではマシュー・ウルフとの優勝争いの末2位に入賞。あまりにも多忙で自宅にはまだ1回しか帰っていないと言うが、プロ入り後全4試合すべてで予選通過を果たし、今回の優勝争いでテンポラリーメンバー(※編注 一定のポイントを稼ぐことでシーズンのそれ以降一時的にツアーメンバーになることができる)になれた。

今後は、推薦試合数の上限がなくなるため、推薦を貰えば何試合でも出場できる状態。本シードを決めるのも時間の問題である。

画像: タイガーは2019年のマスターズで復活優勝を遂げた。そんなタイガーとツアーで一緒に戦うことをひとつの夢として掲げているコリン・モリカワ(撮影/姉崎正)

タイガーは2019年のマスターズで復活優勝を遂げた。そんなタイガーとツアーで一緒に戦うことをひとつの夢として掲げているコリン・モリカワ(撮影/姉崎正)

彼の幼少の頃からの長所は「ボールストライキング」。アイアンの距離感には圧倒的な自信を持っているという。正確なショットでフェアウェイ、グリーンを外すことは滅多にない堅実なゴルフが持ち味だ。同じカリフォルニア出身のタイガー・ウッズに憧れて、彼と同じマネージメント会社にも入ったが、「タイガーがまだ優勝争いをしているうちに、ツアーで一緒に戦いたい」というのが彼の夢だ。

「僕は100%、ツアーで優勝できると信じています。もし4日間、いいゴルフができれば間違いなく優勝できると思います。ツアーに出て優勝することこそが、僕が本当にやりたかったこと。マット(ウルフ)もビクトル(・ホブラン )もジャスティン(・スー)も、みんないいプレーをしていて、人それぞれのやり方でツアーに出場しています。いろんなタイプがいますが、皆がいいプレーをし、切磋琢磨し合うのを見るのは最高ですね。ジュニア時代や大学時代もずっとやってきたことを、今後も続けていければいいと思います」

「ベストを尽くすこと。これは僕をもっとも駆り立ててくれる言葉です。成功してもしなくても、ベストを尽くせば何もネガティブなことはありませんから……」

PGAツアーは強者ぞろい。時には思うようにうまくいかないこともあるだろうが、決して自信を失わず、ベストを尽くし続けて欲しいと願う。

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