狙い目は“純正の一番硬いフレックス”!?
7月、ニュードライバーの発売や新作発表がラッシュである。筆者もいくつかのモデルを試打し特徴を把握しているが、最近、試打会場などで聞くのが「これなら純正シャフトで十分だな」というコメントだ。要は“ツアーAD”や“スピーダー”などシャフトメーカーが単品でも販売中のカスタム用シャフトではなく、そのモデル専用に開発されたシャフトで十二分に良い結果が得られる、ということである。
少し前までは純正シャフトというのはカスタム用に比べ、評価が低かった。純正シャフト装着モデルは、もっとも価格設定が低いのが普通でスペック的には軽く、やわらかいものだったからだ。ゴルフ達者な方々にとって、純正シャフトはややアンダースペックに感じられる、そんな感じのものだった。カスタムのほうがしっかりしているし、なんとなくカッコよかったのだ。
しかし、ここに来て風向きが変わっている。たとえばタイトリスト『TS1』ドライバーは硬度Sで総重量275gと軽量。だが、あえてスペックを聞かなければそんなウルトラライト級ドライバーだとは気づかないほど、振り感はシャン!としている。切り返しで大きくしなり振り遅れ感が出るのが、これまでの軽量ドライバーであり、その純正シャフトの特徴だった気がするが、『TS1』の純正シャフト“タイトリストディアマナ50”は、手元に適度なしっかり感があってスムーズに振れるのである。最近はカスタム用シャフトでも、40g台、50g台で硬度Xをラインナップするニューシャフトが増えており、軽いから頼りないというのは、このことから見てももはや古いシャフト観であるといえるだろう。
いわゆる軽硬に最新の純正シャフトもシフト中。
もちろん、かつては軽いシャフト=やわらかい。逆に重たいシャフト=硬いという認識で間違いはなかった。重さはカーボンシートの使用量(厚み)であり、厚ければ“硬く・重く”、薄くすれば“軽く・軟らかく”なっていたのだ。ところが今はカーボン素材と接着樹脂材料の進化、そして設計技術の革新によって、軽くても硬いシャフトを作れるようになっているのである。
こうしたことが背景にあって、現在では400ヤード級のドライバーショットを放つトッププレーヤーたちでも、かつては軽量といわれた60g台のシャフトをブンブン振っている。90年代なら80g以上のヘビーシャフトを使っているような選手がである。シャフトの進化によって、ハードヒッター=ヘビーシャフトという常識も、もはや非常識になっているのだ。
現在、ドライバーのヘッド体積は460ccが標準であり、飛距離アップのために慣性モーメントを大きくすることに開発ポイントが置かれている。こうした最新大型ヘッドのポテンシャルを引き出すために取り入れられているのが、軽量シャフトなのである。いかにパワー自慢のツアー選手でも、巨大な慣性を持ったデカいヘッドに80gのシャフトを付けてブンブン振り回すことは難しい。ヘッド体積が400cc前後までだった時代とは、そもそもヘッドのあり方が違うのである。ちなみにツアーでも未だに小さめヘッドを使っている選手は、重ためシャフトを選んでいるケースが多い。この場合、シャフトも短くするからである。
軽くて、強いシャフトの開発が進んでいる今では、軽量・純正シャフトにもその技術が惜しみなく使われる。だからこそ、しっかり系で振りやすい純正シャフトが増えているのだ。全体的には軽量シャフトっぽいしなやかさを出しつつ、もっとも応力のかかる手元部にしっかり感を持たせている。これが振ってみるとしっかり感があるように感じるポイントだ。
おすすめとしては、まず、純正シャフトの中でもっとも硬いシャフトから試打してみることである。硬度XがあればXから、なければ硬度Sから始め、SR、Rと試していっていただきたい。その理由は、軽ければ硬くても“ハード”には感じないからだ。
硬いシャフトが“ハード”に感じていたのは、前述したように従来の硬いシャフトが“ヘビー”だったからである。シャフトが硬いほうがヘッドの重さを感じにくく、軽快に振れる!という人も多いので、ぜひ“純正で一番硬いシャフト”を試打の際にはお試しいただきたい。