「やっぱり飛距離。セカンドの番手がひとつ違う」(穴井詩)
「契約選手は試合によって5〜7人くらいですが、ドライバー使用選手となると20〜30人くらいになることもありますね。どの選手も、飛距離を求めて選んでくれているようです」(キャロウェイのツアー担当)
女子ツアーで“飛ぶ”という評判を得ているのが、キャロウェイのエピックフラッシュ サブゼロ。契約プロでいえば河本結が使用してプロ初優勝をつかんでいる。また、契約フリーの成田美寿々、シン・ジエらがこのドライバーをバッグに入れてそれぞれ勝利。
その人気の秘密が飛距離性能にある。現在、多くの女子プロがトラックマンなど弾道計測器をコースに持ち込み、クラブの測定値“ありき”で選ぶ状況にある。どの選手もその数字には極めてシビアで、今使っているものよりもいい数値が出なければ、クラブを替えることはない。
現在エピックフラッシュ サブゼロを使う契約フリーの穴井詩は「やっぱり飛距離。セカンドが1番手違う」とその性能を評価。現在、飛距離ランキングのトップを快走している。
また、エピックフラッシュ サブゼロには「無印」「シングルダイヤモンド(ツアー専用モデル)」「ダブルダイヤモンド」「トリプルダイヤモンド」というヘッド形状の異なるモデルが存在し、自分に合う形状が選べることも人気の背景にあるようだ。
余談だが石川遼が復活優勝を遂げた際に使用していたのがトリプルダイヤモンド。これは、関係者によれば他のモデルに比べ数百回転スピンが入るモデル。スピンが入れば飛距離は落ちるがコントロール性は増す。石川の復活時の安定したドライバーショットを支えたのは、適度なスピンのトリプルダイヤモンドだったというわけだ。
さて、そのエピックフラッシュ サブゼロの唯一の対抗馬と言って良さそうなのが、ピンのG410シリーズ。開幕戦を比嘉真美子が「G410プラス」で制し、今シーズンのシンデレラガール・渋野日向子も同じドライバーでプロ初優勝をつかんでいる。
また、鈴木愛もG410LSTに替えた直後に2連勝を挙げている。先週優勝したタイのランクンも、契約外でピンのドライバー(G400MAX)を使用。契約外でバッグインする選手も散見され、ツアーにおけるピンの勢いもすごいものがある。
エピックフラッシュ サブゼロが契約外の選手にまで広がりを見せているとすれば、G410は替えたばかりですぐ結果を出す選手が多いことからも、契約選手の活躍をしっかりと支えているという印象だ。G410シリーズはライ角をフラットに調整することが可能で、それが背の低い女子選手にぴったりということも支持される理由のようだ。
さて、このように今シーズンの女子ツアーで結果を出しているエピックフラッシュ サブゼロと、G410だが、両者の違いはスピン量で読み解くとわかりやすい。石川遼のドライバーのくだりで触れたように、ドライバーの場合、スピンが少ないほど飛び性能に特化したクラブとなりやすく、ある程度スピンが入ると安定して飛ばせるクラブになりやすい。そして、前者の代表がエピックフラッシュ サブゼロ、後者の代表がG410という状況だ。
鈴木の使うG410LSTはG410よりスピンの少ないモデルだが、それでもなおエピックフラッシュ サブゼロのほうがスピンが少なく出るケースが多いようだ。野球でいえばホームランバッターか、高打率のヒットメーカーかといったイメージだろうか。
ここで気をつけたいのは、「G410よりエピックフラッシュ サブゼロのほうが(誰が打っても)飛ぶ」というわけではない点。2モデルを打ち比べた場合、スピンが少なくてドロップして飛ばせない人、芯にボールが当たらず、曲がってばかりで飛距離を損している人ならば、適度なスピンと直進安定性のあるG410プラスのほうが飛ぶというケースも無論ある。
というわけで、女子ツアーで人気と聞くと思わず手を伸ばしたくなるのがゴルファー人情というものだが、スピンが少ないほうが合う人、スピンが適度に入ったほうが飛ばせる人は腕前や球筋にかかわらずそれぞれいる。当たり前の結論となるが、「欲しい!」となったら、まずは試打してからにするのがオススメである。
撮影/三木崇徳