エビアン選手権で初日単独トップ
毎年フランスのエビアンリゾートで行われる今大会にクリーマーは特別な思い入れがある。
「初めてここに来たときすべてが(トーナメントカラーの)ピンクで埋めつくされていて“ワオ! ここは私のためのトーナメントだわ”と思ったの」。そんな彼女は欧州ツアーのイベントだったこの大会にデビュー間もない18歳で勝っている。
ジュニア時代からピンクのウェアがトレードマーク。当時彼女は“ピンクパンサー”と呼ばれギャラリーの熱視線を浴びていた。
だが25日に開幕した大会初日に登場した彼女は全身黒のシックな装い。ショットが冴え持ち前のパットも絶好調。「すべてをコントロールすることができました」と美しい湖が眼下に広がる“お気に入り”のコースで7バーディ、ノーボギーの完璧な内容でインビー・パークら韓国勢を抑え単独トップに躍り出た。
メジャー大会で彼女がリーダーボードの最上段を飾るのは全米オープンに優勝した10年以来9年ぶり。優勝すれば14年のHSBC女子チャンピオンズ以来5年ぶりのキャリア11勝目となる。
かつては世界のトップ争いをしていたが目下世界ランクは156位。同世代の宮里藍らと一時代を築いた華やかな存在はここ数年すっかり輝きを失っていた。
14年に結婚したユナイテッド航空のパイロット、デレク・ヒース氏とわずか3年で離婚。その年(17年)エビアン選手権で宮里が現役最後に臨んだ際、指名を受けプレーイングパートナーを務めたが以前から苦しんできた左手首の状態が悪化し途中棄権。「こんな大事な試合なのに(棄権して)ごめんなさい」と宮里と抱き合い号泣したクリーマーの姿を覚えている方もいるだろう。
その前後に手首にメスを入れ、長年強い絆で結ばれていたコーチやキャディに別離を告げるなど彼女を取り巻く環境は大きく変わった。
成績も振るわず賞金ランクもジリ貧。昨年はシード圏外のポイントランク113位まで落ち込みクリーマーの名を聞くことは滅多になくなった。
「ここ4、5年は大変なことがいっぱいあったわ。でもその分メンタルはすごく強くなりました(笑)」。クリーマーに笑顔が戻った。たとえ今回勝てなかったとしてもその強靭なメンタルで必ずや困難を乗り越え再び輝いてくれるだろう。