挑戦するのは「お刺身ショット」
飛ばし屋の美女プロ小澤美奈瀬が「とんぼ」の技をやってみる企画。その第4弾は、「オーイ!とんぼ」単行本第2巻で、主人公とんぼがやっていた、「お刺身ショット」。「ジャンボMTNⅢ」の3番アイアンのフェースを開いて構え、包丁でお刺身を「薄造り」にするようにヘッドを入れ、高い球を打つ。要は3番アイアンでのロブショットだ。
このテクニックのポイントは、ロフトの立った3番アイアンをいかにロフトを増やして球を打てるか。技術的には超ロブショットを打つわけだが、ロフト21度の3番アイアンで56~58度のロフトがあるSW並みの球を打つには、30度以上ロフトを増やしてインパクトする必要がある。果たしてどうすればいいのか。
「基本的には、フェースを思いっきり開いて当てることがすべてです。マンガのなかでとんぼちゃんは、フォローで左ひじを抜いてスウィングしています。これは、フェースローテーションを抑えてフェースを返さずに打つことで、寝かせて構えたロフトをスウィング中に増やさないようにしているんだと思います。このイメージで、まず1球打ってみますね」(小澤)
小澤のアドレスは、スタンスがターゲットよりも30度くらい左を向いた超オープンスタンス。そしてクラブを短く持ち、腰を低く沈めて極端なハンドダウンにセットして、思い切りフェースを開いた構えだ。ボール位置はかなり左寄り。その構えから手首のコックを使ってバックスウィングし、ひざを深く曲げて腰を沈めた姿勢をキープしたまま振り抜き、インパクト後は左ひじを引いて思い切って振り切った。
飛び出した球はSWでのピッチショットくらいの高さでポンと上がったが、ピンよりもかなり右方向へと飛び出した。
「スタンスはかなりオープンにしていたんですが、フェースをものすごく開いたぶん、ボールが右に出ちゃいました。これはもっと左を向いて構えないとダメですね」(小澤)
しかし方向はズレたとはいえ、3番アイアンでウェッジのような高さの球を打つことには成功。その秘訣はどこにあるのだろうか。
「ロフトを増やすにはクラブを寝かせてセットする必要があるのですが、ロフトを増やせば増やすほどフェースは右を向き、シャフトは倒れてきます。そうやってクラブに十分なロフトがついた状態にしてから、自分の体をそれに合わせて構えると自然と手元の位置が低くなるので、腰を落して超ハンドダウンにすることでアジャストします。
またボール位置を左寄りにするのは高い球を打つときの鉄則。ゆるやかな入射角でロフトが増えた状態でインパクトしやすくなります。そしてフェースは開くと右を向くので、そのままスウィングするとボールは右に飛んでしまいます。これをスタンス全体を左に向けることで相殺します。1球目は、その左向きの度合いが足りなかったんですね」(小澤)
ということで2球目は、ピンより45度くらい左を向くほど極端に左を狙ってショット! 今度は高めの球がピン方向に出ていい感じだったが、ボールはコロコロと転がりグリーンの外までこぼれてしまった。
「今度はかなりうまく打てたんですが、実は最初の2球はヘッドを入れやすいようにボールをちょっとラフに浮かせていたんです。そのぶんスピンがかからずにオーバーしてしまったんですね」(小澤)
ということで3球目はボールをフェアウェイに移してトライしたが、さっきよりもシビアなインパクトが求められるぶんダフリ気味に入ってしまい、ショート。しかし目指すべきところはわかった。あとは左ひじを抜くタイミングなど若干のアジャストだけだ。
そして4球目。フワッと上がったボールはピンの手前に落ち、ピン横3mほどのところにナイスオンした。
「やりましたー! 難しかったけど、これはイメージが湧いたので、うまくできました。スウィング面ではやっぱりクラブヘッドをヒール側から入れていくことが大事ですね。ロフトが立ったクラブは、フェースをただ開くだけではヒール側が浮き気味になってしまうので、超ハンドダウンにセットすることでヒール側を接地させ、そこからクラブを入れていくのがポイントだと思います」(小澤)
小澤のスウィングを見ると、まずクラブをイメージした球が打てる状態にセットし、そこに合わせて体のポジションを決めるという順番。体が先ではなく、まずクラブありきで考えることが肝心なのだ。
「このショットって、ボールを“飛ばさないテクニック”なんですが、こういう練習を普段しているとどうすれば球が飛ばないのかがわかり、その逆であるどうすれば飛ぶのかということもわかってきます。こういう極端なことにトライするのって、自分の感性を磨くためにも有効ですので、チャンスがあればみなさんも試してみてください!」(小澤)
協力:千葉よみうりカントリークラブ