ストロンググリップでシャットフェース
ダスティン・ジョンソン(以下DJ)と渋野選手のスウィングは似ているとよく言われますが、実際、見れば見るほど共通点が多いことに気がつきます。もちろんフェードヒッターのDJと、基本はドローヒッターの渋野選手ではクラブの軌道は異なるのですが、動きには多くの似た点があります。順を追って見てみましょう。
まずはアドレスを見てみると、両者とも左手の甲が正面から見えるストロンググリップです。このように、同じ握り方をしていることが二人のスウィングに多くの共通点を生み出しています。
左腕を内側に回した状態で構えるストロンググリップは、テークバックで腕を回さずに上げるためフェースが開かずに上げるシャットフェースの使い方がナチュラルな動きになります。そのためトップでフェースは空を向くシャットフェースになり、左手首は左手の甲が左腕と一直線になるか、DJのように掌屈(手のひら側に折れる)した状態になります。
次に下半身の使い方を見てみましょう。バックスウィングで右のひざの位置がアドレスから動いていないため、右へのスライドが少なく、二人とも右腰はほとんどその場で回転していることが見てとれます。
バックスウィングでの右股関節の入り方、背中のシャツのシワの入り方などもよく似ていて、バックスウィングでのエネルギーのタメ方が非常によく似ているという印象を受けます。
ダウンスウィングでは、特徴的な左手首を後方からの画像で見てみましょう。二人とも左手首が手のひら側に折れていますが、これはフェースを閉じる動き、つまりボールをつかまえる動きが早い段階で入っていることを表しています。
これはストロンググリップで握るスウィングの特徴で、スクェアグリップやウィークグリップのようにフェースをターンさせながら打つのではなく、フェースの向きを変えずに体の回転で打つための準備といえます。
続いてインパクトを見てみましょう。ここにも、二人の特徴が見えます。それは、左腕とクラブが一直線にならずにハンドファーストをキープしていること。これは、クラブをリリースせずに体の回転でインパクトを迎えているということを示します。
クラブをリリースすればフェースは閉じるので、それをしないでスウィングしようと思えば、スウィング中つねにフェースをシャットに使う必要がありますし、ストロンググリップであればフェースをターンさせないため左手の甲はアドレス時と同じ正面から見える角度をキープしています。
肩のライン、両わきの締まり方、頭のポジションなど非常に共通点が多いのは、二人とも同じように効率の良い体の使い方をしているということになります。
インパクトを後方からも見てみましょう。二人とも右の体側が縮まるサイドベント(側屈)が強くされていることがわかります。これはクラブをリリースしないことが関係しています。フェースの向きはずっとボールを向いているので、ダウンスウィングでクラブをリリースしてフェースをターンさせる必要はありません。切り返しから下半身リードで右ひじを曲げたまま体を回してきます。
そのため、側屈させないとインパクトでボールに届かなくなります。インパクト付近では遠心力が大きく働くため右ひじは伸びていきますが、回転量の大きい下半身の使い方とサイドベントの大きさも二人の共通点です。
ここで二人の球筋による違いも見てとれます。ドローヒッターの渋野はクラブ軌道がややインサイドアウトになるため振り抜く方向がフェードヒッターのDJとは異なります。DJは体の内側に向かって振り抜いているのに対し、渋野は体の正面に振り抜けています。
二人のスウィングに共通するシャットフェース、ハンドファースト、サイドベント、体の回転量は、二人が採用するストロンググリップであることが大きい要因になっています。
ドローとフェード、球筋の違いによるクラブを振り抜く方向の違いはたしかに大きな違いですが、体の使い方自体は非常に似ている。「渋野日向子とダスティン・ジョンソン似てる説」は本当か? と問われれば、答えは即答で「YES」です。