世界ランクひと桁の実力はダテじゃない
樋口久子さん以来のメジャー制覇は渋野日向子選手に譲りましたが、畑岡奈紗選手はなんといっても日本人の中で世界ランク最上位者(9位、8月27日現在)であり、黄金世代の筆頭であることは間違いありません。
2016年、史上初のアマチュアでの日本女子オープン優勝から、翌年のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンでプロ初優勝、翌週の日本女子オープンを連覇、米ツアーでも既に3勝を挙げ、まだハタチでありながら、すでに素晴らしい実績を残しています。
彼女の非凡なところは、アマチュア優勝を遂げた日本女子オープン最終日の最難関ホール17番、490ヤードのパー4の2打目で見せた池越えのショットと、優勝を引き寄せた最終ホールのバーディパットに表れていると思います。
プレッシャーがかかる場面で最高のショットを打ち、強いタッチで打てる。プロゴルファーとして勝つために必要なメンタリティが若くして備わっていることは、技術を超えた資質と言えると思います。そしてもちろん技術のレベルも非常に高いことが、世界ランク一桁台にいられる理由です。
スウィングを見てみると、左右のスライドはほとんど使わず、体の回転、そして陸上で鍛えた下半身の強さを活かして地面反力を使う割合の大きいタイプです。
まずはアドレスからトップを見ると(画像A)、スクェアなグリップからアドレスで両ひじを内側に絞り、ひじの内側が正面を向いてます。これは、いつも同じように構えること、両腕を体の正面にキープすることにつながっています。スタンスは肩幅が中におさまるくらい広めで、トップで右腰の位置はアドレス時から移動することなく、その場で回転し、エネルギーを溜めています。
左腕を内側に回しながらバックスウィングを取りインパクトでアドレスと同じひじの向きに戻っていることからもわかるように、スクェアグリップで握る選手ならではのフェースローテーションをナチュラルに使うダウンスウィングから、インパクトで左手の甲はターゲットを向き右手の人差し指の付け根でシャフトを押しています(画像B)。
最後に地面反力の使い方です。ポイントは地面を踏みこんで脚を伸ばすタイミングです。画像Bではインパクト後に伸びていますが実際にはインパクト前から踏み込んで伸ばす動作が入っています。
ひと昔前は、左足は動かさないという指導法が主流でしたが、バイオメカニクスやモーションキャプチャー、フォースプレートなど計測器が進化し、分析が進んだことで力の出し方が解明されてきています。
切り返しからの動き出しは下半身、体幹、腕、クラブという順序が大切であり、動き出した後はクラブを加速させるために下半身、体幹、腕の順番で減速することでクラブを加速させているということがわかっています。
畑岡選手自身は意識してこの順序で動かしているわけではないと思いますが、ダウンスウィングの一瞬の中にスムーズにクラブを加速させる効率のいい動作がトッププレーヤーのスウィングには詰まっています。
黄金世代の筆頭として米ツアーを主戦場に戦っている畑岡奈紗。宮里藍さんに続く世界ランク1位も決して夢ではないポテンシャルを持っています。金メダルが期待される来年のオリンピックに向けて、どこまで強くなるのかが楽しみでなりません。